浪人していた時、いつも通っていた図書館のそばにはマクドナルドがあった。
浪人時代はお金がないため、マクドナルドなど利用できなかった(当時は高価だった)。
この店は今のマクドナルドと同じくガラス張りで外から中が良く見えるようになっていた。
だから浪人中の時、よく中を覗いていた。
当時は高校生は少ないものの、大学生のカップルが良く利用していた。
カップルを見て自分のモチベーションの起爆剤にしていた。
自分が合格したらきっとここのマクドナルドに彼女を連れてバカ話しながら大笑いするんだ。
隣のプールで一緒に遊んだ後、このマクドナルドに来よう、とよく妄想していた。
努力して東大に行けば、きっと素敵な彼女ができるに違いない。
自分は何もしなくても、女性のほうから言い寄ってくるに違いない。
マクドナルドを通り過ぎた、小さな団地の中にある公園のベンチに座って、菓子パンの袋を開けた時、自分の妄想タイムが始まる。
菓子パンをかじりながら、当時南野陽子を彼女に見立ててよくそういう妄想に耽っていた。
現在はマクドナルドも隣にあったレジャープールもなくなっている。
代わりに大型量販店ができて、それはそれで今もにぎわっている。
ただ、いまだにこの当時の夢を良く見る。
夢でもいつも外からマクドナルドを外から覗いている。
当時、その店は敷地が広く、庭に子どもが遊べるような滑り台やトランポリンがあった。
子どものはしゃぐ声、隣のレジャープールから聞こえる喚声で、とても賑やかだった。
土日になると、ちょっとしたデートスポットにもなっていた。
マクドナルドの店内を自分がじーっと見ている。
ガラスに映る自分はまだ髪の毛がフサフサだった浪人時代の自分である。
中にいるカップルは、決まって中学校時代のクラスメートだ。
自分は中学時代から時が止まっているため、中学校時代の友人しか夢に現れない。
そして中学校当時カップルと噂されていた二人がよく登場する。
二人はマクドナルドで自分が現実に見たのと同様、笑いながら食事をしている。
自分がそれを外から見ていると、やがてそれに気がつく。
そして、ガラス越しに自分がふざけた真似をすると、女の子のほうが笑って中に入るように手招きする。
お金も持っていないのに自分は調子に乗って店に入ろうとする。
店は二枚扉になっていて、二枚目の扉を開くと、目を覚ます。
こういう夢を見ると必ず目が覚めてしまう。
大抵3,4時間しか経っていない。
そして、とても嫌な気分になる。
いつまでもずるずる過去を引きずりたくないという思いと、失われた過去をもう取り戻すことができないどうしょうもない辛い思いが交錯して、いてもたってもいられない気持ちになる。
だからそういう時はあえて何もせず、ボーっとネットを見ることにしている。
勉強しようと思って参考書を開いても、頭の中は堰を切ったように後悔の念だけが渦巻いてとても本すらまともに読むことができなくなるからだ。
だから2chを見たり、エロ動画を収集したり、全く生産的でない活動をして、とりあえず気持ちをなだめる。
夜中であれば、ビールを飲んですぐ寝つけるようにする。
ただただ、喪失感は増すばかりである。