「まあな。退路は断って来たから」
ぐっと奥歯を噛みしめ、あらためて櫻井は眼差しを鋭くする。
それは自分の大切な群れを守るオスとしての、本能的な気概のあらわれだった。
不意に張りつめた空気が、少しだけ相葉の夢心地を醒まさせた。
櫻井の覚悟を、相葉は胸が締め付けられるような思いで感じ取るしかない
……アルファとしての地位も将来もプライドも、全部捨てたつもりなんだろうけど。
アルファとオメガ、ひとたび、番となれば永遠に離れられない運命。
でも、この関係はそれだけじゃない。
本能とは違う、もっともっと根源的なもの……。
「あの子たちに、……二人に会わせるって決めた時には覚悟は出来てた。もう一度、自分自身にチャンスをあげるって」
「……俺にじゃなくて?」
少しだけ驚いたふうに目を瞠って、櫻井は訊ねた。
「ううん、自分にだよ」
「でも、もともと俺が臆病で煮え切らない男だから……」
相葉は櫻井の唇に自分の指をそっと押し当てる。
触れた個所から、じんわりと温かさが広がり、櫻井は多幸感に一瞬目を閉じた。
そんな様子を相葉はうっとりと見惚れる。
すべてを委ねられている幸せに酔う。
今、二人はようやく一つになれたのだ。
それも相葉の望むカタチで。
家族。
お互いを心から思いやれる家族に。
それは強制でもなく、契約でもない心の絆。
「翔さんが背負ってたモノの大きさ重さを考えれば、迷うのは当然だって分かってたもの。俺を捨てようと思ったのだって、あなたの優しさからなんだって、自分なりに理解してたもん……」
「おまえの方こそ、優しさの塊じゃねえか」
「何それ、あんまり褒められている感じがしないかも。でもね、俺も意地っ張りなんだよ」
「雅紀」
「お情けや同情で、愛を語りたくないの」
もしかしたら、もう真夜中ではないのかもしれない。
月の位置が変わってる。
相葉はちらりと空を見上げ、肩を肩で押し櫻井を促した。
二人の視線が絡まる。
「あなたを愛しています」
薄っすらと笑みを浮かべ、相葉はそう告げたのだった。
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おひさしぶりーふ!
良いのか、こんなテンションで!?