×××××
夏の匂いが色濃く漂う、うだるような暑さの午後。
セミの鳴き声が響く神社の一角で、二人の少年が奇跡のように交差していました。
これが、櫻井翔と相葉雅紀の、歴史には残っていない「もう一つの最初の出会い」です。
小学校に入りたての雅紀は、東京の親戚の家に泊まりに来ていました。近所の神社で行われる夏祭りの準備が見たくて、一人でふらふらと外へ出たものの、見慣れない景色の中で完全に道に迷ってしまったのです。
じりじりと照りつける太陽。
暑さと喉の渇き、そして心細さで、雅紀は境内の大きな木陰にしゃがみ込み、今にも泣きそうになっていました。
そこへ、カサカサと草を踏む音がして、一つの影が落ちます。
白いTシャツに紺の短パン、頭にはきっちりと麦わら帽子をかぶった同い年くらいの男の子。
家族と近くの図書館へ行く途中、少しだけ寄り道をした翔でした。
「……ねえ、きみ、大丈夫? 熱中症になっちゃうよ?」
翔はしゃがみ込み、雅紀の顔を覗き込みました。
「お家の人と、はぐれちゃったの?」
「う、うん……。おじちゃんちが、どっちか分かんなくなっちゃって……」
雅紀の額にはダラダラと汗が流れ、顔が真っ赤になっています。
翔は一瞬「どうしよう」と考えましたが、すぐに自分の首に巻いていた、冷たい水で濡らした青いタオルを外しました。
「はい、これ首に巻きな。少しは涼しくなるから」
翔は雅紀の首に手際よくタオルを巻いてあげると、自分のポシェットから、買ったばかりのパキッと二つに割るタイプのアイスを取り出しました。
「これ、食べる? ちょうど二つに割れるやつなんだ」
翔が力を込めてパキッと割ると、綺麗な半分こになりました。
「はい、冷たいよ」
「ありがとう……!」
雅紀はそれを受け取ると、勢いよく口に含みました。ひんやりとした甘さが、渇いた体に染み渡っていきます。
「冷たくておいしいー!」
向けられた笑顔が、はっとするほど眩しい。
上気した頬と黒目の大きな瞳が、綺麗な明るさを見せます。
「だろ? 僕、これが一番好きなんだ」
境内の木陰で、二人の少年は並んで座り、アイスを食べながらお喋りを始めました。
「どこから来たの?」
「ちば! 海が近くにあるんだよ」
「へえ、千葉かぁ。僕はあっちの坂を上ったところに家があるんだ。今日は塾がお休みだから、本を読みにきたの」
「じゅく……」
「うん、まあね」
翔の少し大人びた、でも優しい話し方に、雅紀の不安はすっかり消え去っていました。
遥か頭上にある太陽は、相変わらずの熱を注いていたが、二人はもう気になりません。
ゆっくりとアイスを食べ終える頃、神社に雅紀を探す親戚のおじさんの声が響きました。
「雅紀ー! どこだー!」
「あ、おじちゃんだ!」
雅紀が立ち上がると、翔も一緒に立ち上がり、優しく微笑みました。
「良かったね。じゃあ、僕はもう行くよ。お母さんが待ってるからね」
「あ、待って! タオル、返さなきゃ……」
雅紀が首のタオルを外そうとすると、翔は手を振ってそれを止めました。
「いいよいいよ、それあげる。またいつか、どこかで会ったら……さ」
拝殿の軒下でチリン、と涼しげに風鈴が鳴った瞬間、翔は麦わら帽子を押さえながら、夏の光の中に走っていきました。
結局、お互いの名前も知らないまま。
雅紀の手元には、翔の家の柔軟剤の匂いが微かに残る、青いスポーツタオルだけが残されたのでした。
×××××
実は「運命の答え合わせシリーズ」と勝手にネーミングしております。
ちび翔、ちび雅紀。
うん、エモいですなあ。。。