イブか……。
そう、もう何度溜息とともに呟いただろう。
俺にとっては、イブはただのイブじゃない。
撮影スタジオの休憩所の片隅に置かれているクリスマスツリー。
セットで売られている安物のオーナメントが、点滅を繰り返すライトにわずかな輝きを見せる。
大体、日本人ってのは、どうして規格化された行事に嬉々としてはしゃぐんだろうか。
とはいえ、俺もそんな喧騒にかこつけて、いつもあいつを……。
と、不意に浮かんだ笑顔に胸が締め付けられる。
もう自分のものじゃないくせに、こんなにも愛しくて切ない。
年末は何も考えたくなくて、仕事を詰め込んだ。
詰め込みすぎて、返って頭が冴えてしまうのは、俺の悪い癖だ。
『……翔ちゃん、働き過ぎ!そういうのよくないよ!』
自分だって相当なハードワーカーな癖に、いつも俺を心配してくれた君。
……会いたい。
ただおまえに、おめでとうと言いたい。
その瞳を真っ直ぐに覗き込みながら、俺を甘やかせてくれるその唇に。
「翔ちゃん!」
どんと背中にぶつかる感覚に振り返る間もなく、ぎゅっと長い腕に抱きとめられる。
お互い、もう二度と触れない約束だったのに。
俺は目を瞑り、一瞬息を止めていた。
感じる、懐かしい温もりを。
「いいの。今は、これはイブの魔法の時間だから……。俺はここには来なかったし、翔ちゃんと二人だけで会ってもいない。すぐに帰るから、あと少し、このままでいて」
鼻に掛かった甘い声。
あっという間に引き戻される。
勝手だよな、俺たち。
でも、恋とはそういうものなのかもしれない。
いい子ぶる心算は無いよ。
ささやかな言い訳もしない。
俺たちの糸は、永遠に完全に解けることはないのだから。
「雅紀、誕生日おめでとう……」
愛してるよ、俺の天使。
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相葉くん、お誕生日おめでとうございます!
40歳、まだ見たことのない相葉雅紀に会えるのを楽しみにしています!
ハッピーな時間をお過ごしくださいね!
皆様、こんな小話にもならないものですみません!
素敵なクリスマスになりますように。