身体の一点がズクンとする。
だが、ソレとは別に、心の中がゆっくりと充たされて行く。
運命の人。
唯一無二の存在。
最初に惹かれたのは確かに彼のオメガ性だったのかも知れない。
だけど、それだけなら、ここまで求めない。
……欲しいよ。
ああ、死ぬほどに。
差し出された相葉の腕を引き、櫻井はきつく胸に抱きとめる。
幸せだけど、心が逸る。
自分の心臓の音が煩いぐらいだ。
何か濃密なものが、部屋の中に漂い始める。
お互いのフェロモンが二人を結び付けようとしているのだ。
そして、勝手に誘い合う。
内なる性が共鳴し合って、急き立てるのだ。
でも、違う。
それとは別に、心が相葉を求めているのだ。
櫻井は自分の息が上がり、逆上せたようになってしまうのを感じていた。
それはまさに、オメガのフェロモンのなせる業だ。
今すぐ、互いの服を引きちぎり、肌と肌を重ね、そしてとけるような熱に欲を埋めたい。
だけど、抱きとめる身体は優しくて……。
櫻井は小さく首を振る。
このままでは欲望に支配されてしまうだけだ。
「さ、櫻井の事業一般は和也に譲って来た。……あいつ、すっごく優秀でさあ。大学でもトップクラスの成績なんだよ」
強いて、軽い口調で言う。
「……知ってる」
吐息のような声音。甘い声は櫻井を刺激するばかりだ。
「それに、女の子にもモテモテで、まあ、あいつ、全員に素っ気ないけどさ」
そうだ。
あいつは雅紀以外なら、誰でも一緒なのだ。
二宮の顔を思い浮かべ、少しだけ踏み止まる。
櫻井は、自分の欲望から意識を遠ざけようと必死だ。
「もう黙って……」
相葉の指が唇に押し当てられ、妖しい光に濡れた黒い瞳が櫻井の言葉を奪うのだった。
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さーて、覚悟を決めて次回は限定になるかなあ。
夏サイダー。
櫻葉には、何故、お邪魔虫が必要なのか。
これは考察が必要な命題ですなあ。
とは言え、イケメン後輩君たちに囲まれてるのは悪くないですけどね。