『マイ・ハニーvvヘイ、ダーリンだよ!起きてるかい?』
携帯を耳に押し当てた途端、馬鹿みたいに快活な櫻井の声が頭に響く。
寝入りばなを起こされたのと、そのあまりに能天気な声に、相葉は少なからずムッとした。
お互い、三十も半ばを越えたイイおっさんなのに、時々どうしてこうも子供っぽいのだろう。
同性の恋人は、分かり易いようで分かりにくい。
まあ、そこが魅力なんだけど……。
相葉はベッドの上で寝返りを打つと、大きく息を吸い込んだ。
……それにしても。
「翔ちゃん!!よくも抜けぬけと、電話なんか掛けられるね!」
『はっ?何の事?何を怒ってるの?』
「昨日の事だよ!昨日の夜、また悪戯しに来ただろう!」
『いたずら!?俺が?』
「そうだよ!黒いマントに黒いマスクをつけて、夜中に窓から寝室に忍びこんで来たでしょ!ぐっすり寝てたのに起こされてさ。お陰で、今日は一日睡眠不足なの!」
一拍の間が開いて、怪訝そうな声で櫻井が言う。
『雅紀、俺が今、取材とかが立て込んでいて、死ぬほど雅紀に逢いたくても、とてもじゃないけどゆっくり時間が取れないって、知ってるだろう?』
「えっ!あ、そうか。でも、あの」
『おいおい、だいたい、俺がそんな妙な扮装をして、雅紀の寝室に押し入ったって言うのか?それも、真夜中に?』
さっきまでのふざけた感じが無くなり、真面目なトーンになっていた。
「だって、翔ちゃん以外に、ハロウインにそんな悪戯をしでかす奴はいないから」
『ちょっと待て!ちなみに、ハロウインは今日だぞ。って、そうじゃなくて、雅紀!具体的にそいつにどんな事をされたんだ??』
切迫した物言いを奇異に感じながら、相葉は顎に指を当てて昨晩起こった事を頭に想い描く。
「えっと、その寝ぼけてたし……。そう言えば不思議だけど、声は聞いていないなあ。ただ、こう頭に、繰り返し繰り返し語りかけて来るんだ。今夜こそ、あなたを奪いに来た、愛してる……とか。そんなふざけた言葉が渦になって意識に響いて来てさ。その内、頭がくらくらして……」
電話口で、櫻井は息を飲んだ。
『くっそ!!こん畜生!!それで、どうなったんだ!?』
あまりの大声に、眉を顰めた相葉は携帯を耳から30センチほど離す。
「うるさいなあ~。まだ耳は遠くないんだからさ、もう」
『いいから、どうだったのか早く教えろー!!』
やれやれと小さく溜息を吐き、相葉はシーツの上に座り直す。
「う~んと、ぼーっとなってたら、熱いんだか、冷たいんだか、よく分からない唇が首筋に当てられて……」
受話器の向こうで、櫻井がヒッと変な声を出す。
『牙を立てられたのか!?雅紀!』
「牙?」
『そうだよ!!牙で、がぶりとやられたのか?』
ただならぬ雰囲気の櫻井。
一体、何のことなのかと、ただただ相葉は呆気に取られるのだった。
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すみません。個人的趣味が爆発のお話です。
趣味に合いそうな方のみ、読んでいただけたら嬉しいな。
でもって、今日で終わら無いのだ。
