もはや抵抗する気も失せ、行動の自由も奪われた相葉が連れてこられたのは、大野の病院の裏手にあるこじんまりとした施設だった。
二階の角部屋を宛がわれた相葉は、放心状態でベッドに腰を降ろしたが、やがてゆっくり立ち上がる。
ガラス窓から見下せば、植物園と見紛うばかりの綺麗な庭。
そこに人影はないが、施設内には微かに人の気配があった。
廊下を歩きながら、痛いほど感じた人の視線。
あの正体は何なんだろう?
こんな所で、俺はちゃんと赤ちゃんを産んであげられるのかな……。
そう思った途端、相葉は一気に不安になる。
産んであげられたとして、自分はその子を育てることが出来るのだろうかと。
「相葉ちゃん……」
戸口には大野が立っていた。
手には大振りのスーツケース。
「アパートに行って、着替えやら持って来た。足りないもんがあったら」
「勝手に部屋に入ったの!?」
あまりの手際の良さに相葉は驚く。
そして、当然のごとく怒りを感じた。
「ああ」
しかし、大野は少しも悪びれていない。
相葉ははっとして尋ねる。
「和は!?」
「ニノは大丈夫だ」
「はあっ!?何で?あの子まだ子供だよ!」
「俺がちゃんと目を光らせっから」
「違う!そう言う事じゃないの!もう一人にしないって、俺は和に約束してるのに!」
相葉は大野のもとに駆け寄ると、その肩を掴んで揺さぶっていた。
だが、ぐらぐらと頭を上下に揺らしながらも、大野の表情は変わらなかった。
「あいつ、そこまで子供じゃねえから」
「そんなこと!大野先生が知ってるわけないじゃない!俺の方が、一緒にいた時間が長いんだよ!?」
「それが違うんだよ」
大野の手が、肩に乗った相葉の手を掴む。
「運命の巡り合わせってのは、恐いよなあ」
「巡り合わせ?」
「俺はあいつを、相葉ちゃんよりも先に知ってるんだよ」
相葉は思わず息を飲んだ。
何かが動き始めている?
いや、自分だけが何も知らなかっただけなのかと、唇をきつく噛み締めるのだった。
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6月も最後の週になりました!
いよいよ、7月かあ。
早いですね!
歌番組、楽しみだなあvv