相葉は無意識に、自分の腹にそっと両手をやった。
まだ僅かな膨らみもなければ、胎動もない。
だが、確実にここには櫻井と相葉、二人の命が宿っている。
ずっとオメガとしての自分の存在を呪っていた。
妊娠なんてと、ただ恐怖しか覚えなかったことが嘘のように、今は気持ちが揺らがない。
……和と大野先生しか知らない秘密。
翔さんだって、気付いてはいなかったはず……。
相葉は驚くと同時に、混乱する。
なけなしの防御の壁が、脆くも崩れ去って行くようだ。
守れないかも、この子を、俺は。
だが、相葉は唇を噛み締め、そんな弱気と不安を打ち消す。
再び、頭を上げて、目の前に対峙する男を見やるのだった。
すると、男の目の奥に、何かが過って行ったのを相葉は見て取る。
「遅ればせながら、おまえの事を色々調べさせて貰った。それで……」
その時、狼狽えたように松本が会話に割って入って来た。
「会長!本当に翔さんの子供かなんか分かりませんよ!こんなどこの馬の骨とも分からない男!」
相葉がきつく松本を睨んだその時、奥の方から声がする。
「うんにゃ、翔くんの子供だよ」
「大野先生……」
「大野さん!」
のんびりとした歩調で近寄って来たのは、あの大野だった。
柔和な表情だったが、瞳は鋭く光っている。
相葉は咄嗟に悟った。
大野と櫻井家は近しい関係だ。
つまり、自分が彼の子を身籠ったことは、筒抜けだったのだと。
……先生にまで、裏切られてたなんて。
怒りよりも絶望の方が大きい。
「相葉ちゃん。ぜんぜん検診に来ないから心配したよ。いくらオメガだからって、男の出産は大変なんだからさ。ねえ、無茶してないか?」
大野の声は優しく、こんな場面でなければ、嬉しくて縋ってしまっていただろう。
しかし、相葉は小さく左右に首を振った。
「まあ、今度どうするかは、話は別だが、おまえには無事に櫻井家の子供を産んで貰わなきゃならん」
櫻井の祖父の言葉には、相葉の意思は汲み取られない。
それが、どんなに哀しいことか……。
「この子は、俺の子です」
語尾が掠れる。
「何を勘違いしている。子供は、おまえの腹を借りてるだけだ」
相手は眉を顰めただけだ。
相葉の瞳に涙が滲む。
悔しくても、腹を立てても、抗うだけの力が自分には無いのだ。
味方になってくれる人はいない。
櫻井さえも、背を向けて行ってしまった。
「相葉ちゃん。俺と一緒に行こう。病院に付属してる施設があるんだ。そこでなら、安心して子供を産めるからね」
そう諭すような眼差しで言うと、大野は瞳を濡らす相葉の前に、そっと手を差し伸ばしたのだった。
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しやがれの次回の予告に持って行かれた週末でしたが、30日のソフラン新CMも楽しみ~!!
相葉くんのマッスル・ポーズ、どんなかなあvv