闇に堕ちるんだと思った。
光の無い暗い闇の中で、悪臭と阿鼻叫喚の世界で息を潜めて、再び時を過ごすのだと……。
と、額にひんやり冷たい感触。
覚醒を促す。
「……熱は無いみたいなんだけど……」
柔らかく温かい声。
誘われる様に、俺はうっすらと目を開けた。
そこには、固く絞った冷たいタオルを俺の額に乗せようとするナチュサボンさん。
「あっ!櫻井さん……。目が覚めたんですね!」
「ナチュサボンさん……」
深い安堵に、俺の声は妙に嗄れていた。
カウチに寝かされていた俺は重い頭を微かに巡らせ、彼の肩越しに辺りを見渡してみる。
そこはいつもの居心地の良いリビングで……、ハーブの香りがほのかに立ち込めていた。
窓からは、夕焼けのオレンジ。
そして、俺を心配そうに見つめるナチュサボンさん。
あの、……大野という男の姿も無かった。
「あ、あの人は?」
「大ちゃん?櫻井さんの事、すごく心配してたけど、寝息が静かだから大丈夫だろうって。ニノのとこに顏出してくるって、さっき、出掛けたところ」
タオルで俺の額を拭いながら、ナチュサボンさんが言う。
「ふーん。ニノとも仲が良いんだ」
「そうだね。不思議なんだよねえ。大ちゃんとは、いつから知り合いなのか良く分かんないの。気が付いたら、そこにいた、みたいな……」
今更みたいに、ナチュサボンさんは小首を傾げた。
そりゃ、そうだろう。
気の遠くなるほどの、永遠の魂を持つ奴らだもんな。
絶大な力がある。
人の意識にスルリと入り込むなんて、簡単なことだ。
人の意識をすり替えることだって……。
そこまで考えて、ふと恐くなる。
ナチュサボンさんの中から、俺の記憶を消されたら?
「櫻井さん?気分、良くないですか?」
押し黙った俺を気遣うように、身を乗り出して来た彼の後頭部に手を差し入れる。
滑らかな首筋にさらりとした黒髪。
「さ、櫻井さん?」
見構える隙を与えないまま、上体を起しながら彼の唇を奪う。
柔らかい唇がはっと息を飲むタイミングで、俺はそっと自分の舌を忍び込ませた。
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今日はキスの日だそーで。
そろそろ、また櫻葉さん達、キスしてくれないかしらん。。。