なんで、あの夜、彼が泣いたのかは分からない。
理由を聞いても、ナチュサボンさんは答えなかったに違いない。
無理に聞き出そうとも思わなかった。
何故なら、そんな奥ゆかしさが彼の優れた美徳なんだから。
麗しの癒しの君。
彼の纏う清浄な空気に、時に、俺は息苦しささえ与える。
最初の出会いから、強烈に惹かれた。
そして、それと同時に、自分という存在が彼の琴線に触れたことも分かっていた。
程なく、呆気なく、彼が己の手に堕ちるだろうと思っていたぐらいに。
珍しい渇望だった。
実は、戸惑いの方が大きかったのは、彼は特別な存在だと心の何処かで感じ取っていたからだと思う。
だけど、気持ちの高まりは抑えきれず……。
キスは媚薬のはずだった。
シチュエーションは完璧。
誰の邪魔も無い俺のテリトリー。
だけど、困ったように眉根を寄せ、俺を見詰めた瞳の美しさに、俺は簡単に身を引いていた。
そして、その涙を、何度も何度も反芻している。
この世に生れ落ちてから、こんな気持ちは初めてだ。
そりゃ、俺は出来損ないだ。
はぐれ者のレッテルを張られている。
でも、そんな自分に満足していたのに。
むしろ、別なモノに生まれ変わった気でいたのに……。
ナチュサボンさんの写真をそっと伏せると、壁に掛かる大きな鏡の前に立つ。
そこには櫻井という男がいた。
しかし、次の瞬間、音も無く鏡の表面にさざ波が立った。
再び、浮かび上がって来たのは、もはや、櫻井という男では無い。
インキュバス……。
それも、なりそこないのインキュバス。
それが俺の正体なのだ。
インキュバス……夢魔、淫魔ですね。
な、なんと翔さんってば!!
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□TVLIFE 第27回年間ドラマ大賞
作品賞
主演男優賞
主題歌賞 I'll be there/
3/14発売号 相葉雅紀表紙&グラビアインタビュー“貴族のキオク”5p&大賞記事2p(羽鳥Pインタビューあり)
やったー!!!
もうね、涙がちょちょぎれるぐらい、嬉しいっす!
ようやく、ようやく、一矢報いた感じ?
まあ、あくまで一矢ですけどね!