今日のNews別冊 第194回 送る言葉 (2009年3月3日分)
エスエイチです。
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一週間ほど前にテレビを見ていると、レバノンとイスラエルの国境でロケット弾が発射されたというニュースが流れていました。ロケットとミサイルは何が違うのかと思って少し調べて書いてみました。
昨日は長男の卒業式で、在校生による送辞と卒業生の答辞がなかなか印象的でした。そこで、内容とは直接には関係しませんが「送る言葉」という題でお送りすることにします。
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今日のNews別冊 第194回
コラム 英語の話 第2回
~送る言葉~
ミサイルの語源はラテン語の「送り出し得るもの(missils)」であり、さらにさかのぼると「送る(mitto)」から来ている。「mitto」から派生した言葉には、「commit(完全に送る)」、「emit(外へ送る)」、「transmit(超えて送る)」のように多い。「miss」という形を取るものには「promise」などがある。「promise」の語義は「先(pro)」に「送る(miss)」という意味(注1)である。
ユダヤ教やキリスト教では使いを送るということにはかなり重要な意味があるようだ。神はアブラハムに使いを送ってメソポタミアからカナン(現在のパレスチナ)に行くように命じ、ソドムの町を滅ぼすときにはアブラハムの甥のロトに使いを送って逃げるように勧めさせた。
主人から送り出されて命令を伝える「使者」や伝えられる「知らせ」のことをギリシャ語では「angelos」という。キリスト教が広がり始めた頃、すなわちローマ帝国の初期には地中海世界の共通語はギリシャ語であった。このため、聖書に出てくる「神の御使い」はアンゲロスと呼ばれた。英語のエンジェルの語源である。日本語では「神使」ではなく「天使」と訳している。
キリスト教の教えは「良い知らせ」と呼ばれていた。ギリシャ語の「良い」は「eu」あるいは「ev」である。例えば英語の「euphoria(多幸症)」は幸せを過度に感じるという病気のことだ。「Eukleides(エウクレイデス)」という人名は「良い(eu)」ことの「鍵(kleides)」か「真実(eu)」の「鍵(kleides)」という意味らしい。大数学者であったユークリッドにふさわしい名前である。
「良い知らせ」やそれを伝えることをギリシャ語では「evangelion」という。「良い(ev)」ことを「伝える(angel)」という意味である。英語では「evangel」は聖書の教えという意味になる。日本語では「福音(良い知らせ)」というように意訳されている。「evangelist」は狭い意味では福音書を書いたマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネのことであるが、一般には「福音伝道者」という意味だ。最近の企業では「会社の良いことを伝える人」としてエヴァンジェリストという肩書きを持つ人がいて、企業活動と宗教は似ているのかもしれない。
初期のローマ帝国ではキリスト教が禁止されていたため福音伝道は命がけの仕事だった。たとえばキリストの12使徒の一員であるペテロとパウロはローマで殺されている。しかし、時間と共にローマ帝国のキリスト教に対する扱いは変わってきた。コンスタンティヌス大帝がキリスト教を公認し、テオドシウス帝はキリスト教を国教とした。
キリスト教が広まっていく時期に、ローマの公用語であるラテン語が地中海世界の共通語となっていった。それに合わせて聖書の教えは、ラテン語の「良いこと(bene)」と「話す(dict)」を組み合わせて「ベネディクト(良い言葉)」と呼ばれるようになった。
キリスト教徒の重要な儀式に聖餐式がある。祝福したパンとワインを食するもので、カトリックではミサと呼ぶ。ミサの語源は聖餐式の最後に宣言される「Ite,missa est(行け、お前達を派遣する)」である。すなわち、ミサとは「使いを送る」という意味だ。ミサには、布教に出かける人の壮行会という意味合いもあるのかもしれない。
このようにして送り出された人々やその人々が行うことを「mission(使命)」という。日本語ではミッションのことを布教とか伝道と訳している。日本人にとって馴染み深いのはミッション・スクールであるが、これはキリスト教が布教を目的として非キリスト教国に建てる学校のことだ。
軍事用語では「mission」は特務部隊とか攻撃任務という意味になり、同じ語源の「missile」に近くなってくる。昔「Mission: Impossible(不可能な使命)」というテレビ番組があったが、これも軍事用語的な意味である。
2000年前の布教は平和なものだったが、最近では宗教の違いによる戦争もある。自分たちの思想や信仰を広めたいのであれば、ミサイルや攻撃部隊を送るのではなく、言葉を送ることに戻るべきだと思う。
注1 この話をしたところ、"支払いを先送りするための会社で、そ
ういう名前の会社がありますね"と言った人がいました。
今日のNews別冊 第193回 減反 (2009年2月3日分)
エスエイチです。
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今日お送りするお話も今朝の朝食時と通勤の自動車の中での会話です。
最近、自動車の中の話が多いので、「通学中の雑談」という分類を作ることにしました。
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今日のNews別冊 第193回
コラム 通学中の雑談 第1回
~減反~
朝起きて新聞を取りに行くと一面のトップ記事が「減反選択制を検討」というものだった。興味深いテーマなので、子供達に"減反って知っているか"と聞いた。子供達は"知っている"と答え、横から妻が"減反を廃止したほうがいいという記事が昨日出ていたけれど意味がわからなかったよ"と言う。長男は新聞の記事を読み始めるが、朝に弱い次男は読もうとしない。
"減反を止めると何が起こる"と聞くと、長男が"米がたくさんできる"と答える。"その結果は"と聞くと、"米の値段が下がる"という当然の答えが返ってくる。すると洗面所にいた次男が"値段が下がると作る人が減ってまた値段が上がるんじゃない"と意見をいった。それに対して、"米の関税を止めるから外国から安い米が入ってくる。だから値段は上がらない"と長男が説明する。次男は"タイ米とか日本のお米とは違うんじゃない"と反論する。
台所にいた妻が"オーストラリア産のコシヒカリはおいしいと言っていたよ"と言うので、"タイ米はインディカ米という種類だけれど、日本のジャポニカ米を作っている国もたくさんあるんだよ"と次男に説明した。"おいしいのかな"と聞くので、"輸入されるようになると、作る人たちは買う人の好みに合わせようとするから、おいしくなってくるだろうね。ラーメン用の小麦は、日本人の好みに合わせてオーストラリアで作っているのが高級品なんだそうだ"と答えた。
自動車に乗って話を続けた。"減反と価格維持をやめて外国からお米が入ってくると何が起きるんだろう"と聞く。長男が"農家がつぶれる"という。"どういう農家"と聞くと"兼業農家かな"という。"それはあると思うが、他の見方もあるね"と聞くと、しばらく考えてから"小さい農家"と答える。"そうだね、規模の小さい農家はやっていけなくなって、大規模化が進むんだろう"と話す。
"大規模化が進むと、人一人当たりの生産量や収入は増えるけれど、面積当たりの生産量は減るんだね"と説明すると"どうして"と聞いてくる。"大規模化するとコストを減らすのが大事だからだよ。面積が少ないと、そこからどれだけ取れるかが問題だけれど、広くなれば取れる量が多少減っても手間を減らすことが優先するんだ。"
"じゃあ、食糧自給率はどうなるだろう"と聞く。"減るんじゃないかな"と次男が答える。"日本人の食べる米の一部が外国の米で置き換わるからその部分は減る。でも動物の飼料にするのが増えれば自給率が上がるかもしれない"と説明すると、"それは考えていなかった"と長男が言った。"日本の穀物の生産量が増えるか減るかはどちらの可能性もあるね"と説明した。
時間がなくなってきたので大急ぎで説明を続ける。"カロリーベースの自給率は上がるか下がるか微妙だけれど、金額ベースの自給率は下がる可能性が高い。農業の日本の中での割合は0.8%ぐらいなんだけれど、これも下がるだろうね。日本人が野菜とかがもっと高くてもいいと思うか、野菜や果物の輸出が増えれば話は別だけれどね。雇用という目で見ると、農業全体の収入が減って大規模化が起きると、かなりの人が農業を辞めることになるんだろう。"
駐車場についたので車を降りる。歩きながら、"政府がこれをやる本当の原因は何だろう"と聞くと、長男が"関税の撤廃"と答える。"そう、WTOによる農作物の自由化だ。米国が農産物を輸出するために関税の撤廃を求めているんだね。日本政府は農家を守ってきたけれど、それも限界ということかな"と話した。
今日のNews別冊 第192回 農業と雇用 (2009年2月2日分)
エスエイチです。
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最近、いろいろなところで雇用問題が取り上げられています。少し専門的になってしまいますが、雇用とその他の経済的指標の間には
雇用者総所得=国内総支出-資本消耗引当-間接税-営業余剰+経常補助金
雇用者総所得=雇用者数×雇用者平均所得
という二つの関係が成り立っています。このため、マクロに見ると、雇用を増やす方法は、皆がお金を使う(国内総支出増大)、会社の儲けを給料にまわす(労働分配率増加)、ワークシェアリング(雇用者平均所得減少)程度しかないのです。
大手の新聞であっても、こういうことを理解していない記事が多いのには困ってしまいます。
今日お送りするお話は今朝の通勤の自動車の中での会話です。息子たちは高校生ですので、まだ全てを考えることはできていませんが、大局的なものの見方は身についてきているようです。
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今日のNews別冊 第192回
コラム 日々の出来事 第30回
~農業と雇用~
新聞を読んでいると政府が農業と林業で5000人の雇用を創出するという記事が載っていた。農業の場合には収入が少なくて給料が払えないので一人雇うごとに月額9万円から9万7千円を研修費の名目で補助すると書いてある。それに対して、農業コンサルタントが、"補助金では意味がなく、大規模化による待遇改善が必要"という意見が書かれていた。
自動車に乗って、どう思うかを子供達に聞いてみることにした。次男はこの新聞記事を読んでいなかったので、長男にまず説明させた。次男が、"補助金はずっと出るの"と聞く。そこで"新聞には12ヶ月と書いてあったね"と答えた。"1年だけの雇用に意味があるのだろうか"と聞いてみると、"経済危機だから一時的にでも働けるのは意味があるんじゃない"と長男が答えた。"確かに意味はある。しかし雇用創出という言葉を使うのは違う気がするな"
長男が"どうして大規模化すると待遇改善になるのか良くわからない"と聞いてきた。"大規模化すると一人当たりの収入は増えるだろう"と言うと、"機械化するからかな"と考え込んでいる。"それもあるし、一人当たりの面積が増えるからね"と答えた。
すると次男が"そのときは農業をやっているひとが減るんじゃない"と言う。"どう思う"と長男に聞くと"それは減ると思う"という。"人が減るのでは雇用対策にならないね。どうすればいいのだろうか"と聞くと"農地を増やせばいい"と答える。"農地を増やすとどうなる"と聞くと、しばらく考えてから"そうすると農産物が値下がりするだろうな"と言う。そこで、"それでは解決になっていないね"と答えた。
この問題にはあまり良い答えがないと思ったので、"あの農業コンサルタントは雇用のことを考えていないのだろうか"と聞くと、次男が"今農業をやっているひとの待遇改善しか考えていないんじゃないかな"と言う。"人間は、その場の問題と関係なく、普段自分が問題だと思っていることを話すことが多いからね"と説明した。"雇用問題については政府も農業コンサルタントもいい答えを持っていないようだ。もっと考えてみないといけないね"と話をしている間に駅に到着した。