グルメ漫画『美味しんぼ』。



連載開始が1983年だから、今から36年前の漫画だ。

現在は一応、休載中でことになっている。

読み始めたのは小学生の頃。

美味しんぼにはハマったなぁ。

単行本は全部買ったもんね。

この漫画を読み続けたことで、完全に原作者である雁屋哲の世界に毒されてしまった。

化学調味料や食品添加物を忌み嫌い、アサヒのドライビールなどはビールではないと思い込んでいた。

絶対にワサビを醤油に溶かず、刺身に乗せて食べるようになった。

パソコンもウインドウズではなく、マックを選ぶべきだと思い込んでいた。

そんな“美味しんぼ中毒”だった頃が懐かしい。

しかし、家の本棚に美味しんぼの単行本が占領するようにならにつれて次第に冷めていってしまった。

なぜか?

単純につまらなくなったからだ。

特にそれが顕著になったのは、『日本全国味めぐり』企画辺りからだった。

一応は究極のメニューと至高のメニューの対決とはなっているものの、基本は全国の地方メニューを淡々と紹介しているだけ。

対決当初は違った。

第一回の対決となった卵対決、続く野菜対決では全く海原雄山の相手にならなかった山岡士郎。

それでも敵意丸出しで雄山に挑み続け、次第に雄山を“おっ”と言わせるようになっていった。

ところが、栗田と結婚した辺りから次第に山岡の雄山への敵意が薄れていく。

対決で敗れてもけろっとしている。

なんというか、山岡から喜怒哀楽が徐々に消え失せていくように見えた。

会社のゴミ箱を蹴飛ばし、上着を叩きつけて感情を爆発させていた山岡は姿を消した。

残ったのは、女房にいいようにあしらわれ、同僚の女性社員や富井副部長から暴力を受けながらおちゃらけるヘタレ山岡。

飛沢といった新世代キャラの登場により、山岡の役割が悪い方へ変化。

最終的には完全に無色透明な存在にまで没落してしまった。

対決以外でも、トラブル発生⇨食べ物食べて解決という黄金パターンが完全にマンネリ化。

またかよ、という思いと共に、それはいくらなんでも、という展開が目に余るようになった。

最大の敵である海原雄山も、登場当初の傍若無人ぶりが鳴りを潜めてしまい、ボスキャラ感が完全に消え失せてしまった。

山岡と結婚したヒロインの栗田ゆうこも同様である。

当初はとってもキュートで聡明なお嬢さんだったのに、物語が進むにつれて性格も体型も肥大化。



ひょっとしてまさか、と思わせるほど雄山に傾倒してしまう。

後半では完全に雄山マンセーぶりを見せるようになる。

まだ金城カメラマン、二木さん、団社長との恋愛ダンゴ時代まではヒロイン感を維持していたのだが、山岡と結婚してからの栗田さんはもう栗田さんではなくなった。

山岡同様、何かを達観してしまったのか喜怒哀楽が抜け落ちる。

それまでは頭の中は山岡と食べ物のことしかなかったのに。

母親となってからの栗田さんはどっしりと余裕をみせて、なんだか観音様みたいな印象。


ちなみに、ネット上では栗田さんを語るとき、必ず登場するセリフがこれ。

「ヒラメがシャッキリポン、舌の上で踊るわ!」

これって、“シャッキリポン”じゃなくて、

“ヒラメがシャッキリ”

“ポン、と舌の上で踊るわ!”

という意味だと思うんだけどなぁ。

なぜか“シャッキリポン”という一つの言葉になってる。

面白いね!


話を戻そう。

主人公とヒロインがここまで変わってしまうとは。

登場人物の中では谷村部長と並んで安心感が抜群だった岡星さん。

そんな岡星さんもなぜか後半には鬱キャラにさせられ、急速に安定感を失った。

その岡星に生きる力を与えようとして始まった西健一郎の春夏秋冬料理シリーズ。

これがまた自分には退屈極まりなかった。

だらだらと訳の分からない説明が延々と続き、この料理を食べてなぜ鬱から抜け出せるのか理解不明。

強引すぎる。

この頃にはコミックスの最新刊が出ても、完全に惰性で買うようになってしまった。

43巻(だっかな?)で山岡が栗田さんにプロポーズした辺りはワクワクしながら何度もコミックスを読み返したというのに。

やはり漫画って、ダラダラと長期間に渡って連載していくとダメなんだ。

こち亀しかり、無理に引き延ばして訳の分からない展開になっていった北斗の拳しかり。

ゴルゴ13だって、主人公のデューク東郷がいつしか無感情&無表情になってしまったし。

とにかく、山岡と雄山がなぜか東日本大震災をきっかけに遂に完全和解。

山岡は雄山を「父さん」と呼び、雄山は山岡に母親との思い出の皿を渡した。

山岡、雄山、栗田さんがガッチリと手を合わせた場面で物語は現在休止中である。

和解した二人のその後も見たい気もするが、きっと美味しんぼはこれで終わった方がいいのだろう。

さよなら、美味しんぼ。

さよなら、究極のメニューと至高のメニュー。

さよなら、東西新聞社と美食倶楽部。

いつかまた会いましょう!