ずっと、とどまっていた海底から
ふわり、浮き上がって
ゆるり、目が覚めた。
季節は冬。
温度管理がなされ、窓がない無機質な部屋からでは
まったく手がかりがないが、直感的にそう思った。
涙は乾いていた。
眠りにつく直前まで涙が止まらなかった。
この涙が乾くまでにどれぐらいの時間を要したのか。
眠りについてもなお、涸れるまで私は泣いていたのか。
彼の顔に触れた感触がしっかりと残っている。
そこに長い時間が横たわっているとは信じがたい。
宇宙船に乗って違う星にやってきたように。
彼からは遠くはなれ、もう会うことはできない。
昨日
そう、私にとっては昨日会ったばかりなのに。
ひとつ零れた涙が化石になった。
厭な男
[元気だよ。なに?抱かれたいのwww]
久しぶりにメールしたらこんな調子で、少しイラっとした。
[別に。単純にいま、ふと思い出しただけ。じゃ、またね]
自分でも、わかってる。
なんでこの人にメールしたんだろう。
意味がわからない。なに考えてるんだ。
かつて仲間だった彼とは2度か3度ほど寝た。
「欲求不満か?」と散々からかわれたが、
いまだに何で寝たいと思ったのか理由が思い出せない。
いつも軽い調子で、人を小馬鹿にした態度の彼を、
表面をすべて引き剥がして解剖したかったのかもしれない。
最初はきっと、そんな感じの理由。
端っから、私と彼の間に愛情なってものは1ミリグラムも存在しないわけで、
私は好奇心から、彼は暇つぶしぐらいの気持ちでしかなかった。
キスをしたとき、なんで私はこんなことをしてるんだろうと、
どうしようもなく自分がアホらしく思えて、消えてしまいたいぐらいだった。
しかし、愛がない割には行為のときだけ彼は優しかった。
強制はしなかったし、嫌だといったらすぐにやめてくれた。
ほとんどの間、指を絡めてきてたから、手を握ることが多かった。
終わった後もかなり長い間頭を撫でてくれたし。抱きしめてもくれた。
ただし、その行為の間だけの話である。厭な男だ。
服を着替えたころには、すっかり元の彼に戻っていて。
気を抜いて少しだけ甘えてしまった私の発言をやり玉にあげて、
飽きることなく小馬鹿にし続けている。
私が一番言われたくないことがわかるみたいで、
結構ぐっさりくる。本当に厭な男だ。
これが好きなひとだったら。
そんなこと言われたら傷つくし、言われないために
駄目だなと思う部分は隠すのだろうと思う。
彼に好かれようなんて一度も思わなかったから。
残酷なことも、気ちがいじみたことも、腹黒いことも言えた。
私と彼は、悪意、みたいなものでつながっていて、
そしてその時間だけはとても自由だった。
私が最低な人間であることを隠す必要は、まったくなかった。
今だって、私は本来の自分より3割増で
よく見せようとして生きている。
その割増した3割が嫌で嫌で
どうしようもなくなったとき、
彼のことを思い出す。
彼は、嫌な自分を映す鏡みたいなものなんだ。
そして相変わらず最低なものいいに閉口して、少し笑うのだ。
本当に、厭な男だと。
[元気だよ。なに?抱かれたいのwww]
久しぶりにメールしたらこんな調子で、少しイラっとした。
[別に。単純にいま、ふと思い出しただけ。じゃ、またね]
自分でも、わかってる。
なんでこの人にメールしたんだろう。
意味がわからない。なに考えてるんだ。
かつて仲間だった彼とは2度か3度ほど寝た。
「欲求不満か?」と散々からかわれたが、
いまだに何で寝たいと思ったのか理由が思い出せない。
いつも軽い調子で、人を小馬鹿にした態度の彼を、
表面をすべて引き剥がして解剖したかったのかもしれない。
最初はきっと、そんな感じの理由。
端っから、私と彼の間に愛情なってものは1ミリグラムも存在しないわけで、
私は好奇心から、彼は暇つぶしぐらいの気持ちでしかなかった。
キスをしたとき、なんで私はこんなことをしてるんだろうと、
どうしようもなく自分がアホらしく思えて、消えてしまいたいぐらいだった。
しかし、愛がない割には行為のときだけ彼は優しかった。
強制はしなかったし、嫌だといったらすぐにやめてくれた。
ほとんどの間、指を絡めてきてたから、手を握ることが多かった。
終わった後もかなり長い間頭を撫でてくれたし。抱きしめてもくれた。
ただし、その行為の間だけの話である。厭な男だ。
服を着替えたころには、すっかり元の彼に戻っていて。
気を抜いて少しだけ甘えてしまった私の発言をやり玉にあげて、
飽きることなく小馬鹿にし続けている。
私が一番言われたくないことがわかるみたいで、
結構ぐっさりくる。本当に厭な男だ。
これが好きなひとだったら。
そんなこと言われたら傷つくし、言われないために
駄目だなと思う部分は隠すのだろうと思う。
彼に好かれようなんて一度も思わなかったから。
残酷なことも、気ちがいじみたことも、腹黒いことも言えた。
私と彼は、悪意、みたいなものでつながっていて、
そしてその時間だけはとても自由だった。
私が最低な人間であることを隠す必要は、まったくなかった。
今だって、私は本来の自分より3割増で
よく見せようとして生きている。
その割増した3割が嫌で嫌で
どうしようもなくなったとき、
彼のことを思い出す。
彼は、嫌な自分を映す鏡みたいなものなんだ。
そして相変わらず最低なものいいに閉口して、少し笑うのだ。
本当に、厭な男だと。
