【飴細工】④練習 | 転がるコウモリ

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しばらくの練習を経て、「練り(飴のボール形成)」と「練った飴のボールを棒につける」という最低限の基本ができるようになれば、次のステップは、「鍋で飴を融かす」「和鋏を使ってうさぎをつくる」となる。

 

その第一関門が、練りと棒付けの師匠チェックだ。練って丸めた飴玉と、棒に付けた飴の2枚の写真を撮って、メールで師匠に送るのである。

 

 

師匠のOKが出るまでには、左手の親指、右手の親指・人差し指・中指に何度も火ぶくれができた。火ぶくれそのものはもちろん痛いが、その火ぶくれが破けた後も、指の薄皮が飴にくっついて強制的にむけるのがかなり辛い。

 

その辛みに耐え、ひたすら飴を練って丸めていると、火傷をしにくい飴の融け具合、つまみ方・練り方が分かるようになってくる。そうなると、途端に飴玉の形が良くなり、棒にもバランスよく付くようになり、師匠からOKが出るのだ。

 

OKが出れば、いよいようさぎづくりである。DVDで師匠の言葉少なめな説明と見本動作を確認し、いざつくってみる。

 

鍋で飴を融かす

 

もちろん、思い通りにいくわけがなく、試行錯誤と、基本の繰り返しである。飴が良いのは、一度作っても、鍋に入れれば「材料」に戻るということ。製品として販売する場合にはそうもいかないが、販売するわけでも、自分で食べるわけでもないので、失敗も衛生も気にすることなく繰り返し練習できるのである。

 

失敗作。失敗する主な原因は、

  • 飴の温度管理できていない

    飴の温度が高く柔らかすぎる/低く硬すぎる

  • 練り不足

    温度が一定でないため成形がうまくできない

  • 丸く棒につけられていない

    バランス悪く成型がうまくできない

  • ハサミを入れる角度と深さが間違っている

仕事から帰ってきたら台所に立ち、飴を鍋で溶かし、練習する。気になった部分は、DVDの師匠の動きをスローモーションにしたり、拡大して確認しながら、検討と試作を繰り返して写真とメモを残す。そんな日々が何日も続いた。

 

1か月もすると、何羽かに1羽、自分のなかで60点(甘めにおまけ付)がつけられるようなうさぎがでてくるようになった。もちろん、ちょっと気を許すと、生まれたての子豚みたいな形になる。この時は、全羽が60点を超えるようになるために、まだまだ何百、何千羽とつくろうと思ったものだ。

 

飴細工の練習にも気を付けなければいけない。というより、むしろ和鋏の方が危険度は高い。鋏の刃は鋭利で、刃先も鋭く尖っているため、人の皮膚や肉などたやすく刺さり切断する。

もちろん、普通に作業していれば、鋏で手を刺したり切ったりすような動きにはならないが、仕事後の注意力散漫な状態だったり、気が焦って慌てたりすると、手元が狂って指を切ったり、あらぬところを刺したりするのだ。

 

一度あったのは、

  • 飴を持つ左手は「あ、ここの形をなおさないと」と考え
  • 鋏を持つ右手は「あ、鍋の飴を戻さないと固まる」と考え

それぞれが別に動いた結果、何の躊躇もなく見事に左手に鋏をぶっ刺したのだ。

刺さった瞬間、血糊をつめた水風船に穴が開いたように、ぴゅっと血が噴き出し、その後は血の雫がぼたぼたっと床に落ちたのであるが。不思議なもので、ささった瞬間に感じた鋭い痛みは次の瞬間には消えていて、「オレ、アホ?」と「血ってこんなに勢いよく吹き出すのか」と「床と飴に血を垂らさないようにしなきゃ」の3つで頭がいっぱいになったのを記憶している。

 

そんな「あるある」なトラブルを経験しながらも、「練り」と「うさぎづくり」の練習を、地道に、楽しみながら続けた。

 

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