ネタバレ含む

 

大河ドラマ『山河燃ゆ』の総集編を観ました。

このドラマ、リアルタイムでも観てたのですが、結局結末まで見続けることなく、終わってしまいました。

 

近代史の興味から、このドラマでも二・二六事件、東京裁判を取り上げるということで、改めて総集編を観てみることに。

殆ど内容を忘れていましたが、そういえばリアルタイムで観ていたとき、松本幸四郎(松本白鸚)西田敏行が兄弟という設定にちょっとビジュアル的な無理を覚えたことを思い出しました。

 

総集編ということもあるのか、二・二六事件、東京裁判は割とさらっと終わった感じでした。

それより、松本幸四郎演じる主人公天羽賢治がやたらモテまくりの、メロドラマティックな恋愛模様が自分にはちょっと退屈でした。

 

太平洋戦争における、アメリカに移住した日系アメリカ人の苦悩と言った内容で、原作は山崎豊子『二つの祖国』。2019年にもテレ東でドラマ化されているようです。

日系二世は一番辛い時代に生まれ、日本人とアメリカ人の狭間で苦悩した世代だったのかもしれません。パールハーバーの奇襲攻撃によるアメリカ人の反感を一身に受け、収容所に入れられ、危険な最前線に送り込まれる。彼らはアメリカ社会に受けいられるべく多くの辛苦をなめてきたのでしょう。

大河ドラマ化に関しては、アメリカの日系社会から猛攻撃を受けアメリカでの放映が中止に追い込まれたようです。何故そんな猛攻撃を受けたのかは謎ですが、どなたかの見解で、天羽賢治はどちらかと言えば日本で育ち、日本よりの日系人なので、アメリカ人として生きる日系社会の代表みたいに描くことに反感を覚えたのではないかと言うのがあって、まあ、ドラマ自体が日系人を差別するアメリカに対してやや批判的に描かれていることが要因なのかなーと言う感じもあります。日系人にとってはやっとアメリカで認められ市民権を得たのに今更アメリカに迫害された歴史を掘り返して欲しくないのかもしれません。二世以降の日系人はチャーリー田宮同様、心は完全にアメリカ人なので、二つの祖国という概念もないようで、それ故に大河ドラマのタイトルも『二つの祖国』から『山河燃ゆ』に変更になったとか。

天羽賢治に関しては、実在の人物伊丹明(デイヴィッド・イタミ)ハリー・K・フクハラ(福原克治)をモデルにしているそうで、特に鹿児島出身とか、極東国際軍事裁判の通訳モニターとか、最後のピストル自殺などは、伊丹明が色濃く反映されている感じです。

 

結末が主人公のピストル自殺というのは分かっていたのですが、天羽賢治が終始自殺しそうにない人物だったので、どうやって自殺に至るのかがこのドラマの焦点でした。

結果、このドラマにおいて、天羽賢治が自殺する理由が自分の中ではまったく釈然としませんでした。

伊丹明の自殺に関しても、原因となるものが諸説あるようですが、原作の天羽賢治は妻との関係が破局し、結婚を約束した梛子が亡くなり、除隊後も日系人がよい職業につけない上に米陸軍対敵諜報部隊(CIC)から厳しい査問を受け依然としてアメリカ人として認められていない等の事情から自殺を選んでいるようです。

しかし、ドラマは梛子は亡くなったけど妻と和解し、息子もいて、除隊後の日系人の扱いに関しても特に描かれていないので、自殺に至る動機が薄い気がします。梛子に関してはドラマでは結局妻より愛してしまっていたのか、なんなのか、よくわからない関係でした。どうにも天羽賢治が大原麗子とか、あっちこっちの女性にふらふらしていていただけないのです。

東京裁判で裁かれた戦犯と、戦争を止められなかった自分は同じだから、自ら罰しなければならないみたいなことを言っていたけど、それはちょっと飛躍し過ぎているし、自罰が過ぎる気がします。

弟を撃ったことを激しく後悔してましたが、あれは弟を人質に逃げようとした弟の上官を止めようとして思わず発砲し、それが弟に当たってしまったという不可抗力なので、そこまで自分を追い詰めることもないだろうと思ってしまいます。また、弟もあのシチュエーションで兄を恨む筋合いはないので、なんだかそのシチュエーションにも無理を感じました。

東京裁判の真実を記者として世の中に伝えて欲しいという梛子の遺言を無視して死を選ぶのは、なんだか、己の責任から逃げてしまったように思うし、和解した妻や息子もいるのに、あそこで死を選ぶのはどうにも納得いかないのです。

いや、人が自殺する理由など、本当のところはわかりようもないかもしれないが、少なくともそういうことなら自殺を選んでもしょうがないなーというそれなりの納得感が欲しかったです。

伊丹明の自殺に関しては鬱病説もあるので、もしかしてドラマの天羽賢治も鬱病だったのかもしれませんが、松本幸四郎にはそいう精神が病んでる感はなかったんですよねー。

この釈然としない感じは総集編だからなのかなー。

 

沢田研二演じるチャーリー田宮が最後に殺されるのもちょっと唐突というか、原作では殺されないようなので、なぜ、あえて殺したのだろうと言う感じです。中身がアメリカ人でも外見は所詮ジャップという日系人の矛盾を表したかったのかな?

 

東京裁判の通訳モニターを務めた人物と言う意味では興味深い題材のドラマでしたが、実際原作よりドラマの方が東京裁判の描写は薄かったようなので、そのあたりもちょっと期待はずれと言えます。

しかし、改めてこういう内容のドラマだったのだと確認出来て良かったです。