『太陽』『日本のいちばん長い日』『東京裁判』『プライド・運命の瞬間』と見てきたが、昭和天皇マッカーサーの会見に至るまでをアメリカ視点で描いた作品を見るのははじめてかも。昭和天皇が戦犯として裁かれることをいかにして回避したかと言う点も、アメリカ側の見解がどう描かれるのか期待した。

 

GHQ最高司令官ダグラス・マッカーサーはあまりに有名な人だが、パイプを加えて飛行機を降りる写真のインパクト以上に何をした人なのかあまりぴんとこなかったので、映画で彼を描くのも興味深かった。映画でもこのパイプを加えて飛行機を降りるまでの裏話が描かれていて面白い。

 

もっとも、この映画の主役は昭和天皇の戦犯訴追免除に大きく関与したとされるボナー・フェラーズ准将である。

(ただし、2020年以降はそれを疑問視する見解もあるとか)

また、フェラーズ准将と友人関係にあったという一色ゆりの恋愛描写などはフィクションだとわかっているので、正直そのシーンは退屈だった。この種の史実をもとにした映画は出来る限り余計なフィクションは入れないでほしい。また、フェラーズ一色ゆりのことであまりに私情に流された判断をしているようにも見えて効果的な気がしない。

 

アメリカ映画と言っても、原案、原作、製作、俳優など、多くの日本人が関わっている。

そのため、日本描写はまあまあ、自然に描かれている。主な撮影がニュージーランドで行われたということで、ところどころ日本ぽくない雰囲気もあるが、商業映画では初と言われる皇居敷地内での撮影などもちゃんと行われている。

 

昭和天皇にどこまで戦争責任があるのか、『日本のいちばん長い日』に描かれるように、本当に昭和天皇は終戦に大きく貢献したのか、映画の中でボナー・フェラーズが言うように、それを証明するものはないし、真実を知りようもないことなのかもしれない。

マッカーサーは昭和天皇の言葉を聞き、その内容に感動し、彼を戦犯として裁かないという判断をしたようだが、映画の描き方として、ちょっとわかりにくい気もする。

マッカーサーが日本を円滑に統治するために、昭和天皇を利用するという判断を下し、戦争責任を問わないよう、「天皇は戦争に反対し、世論や軍部に抵抗できず、反対しようものならクーデターが起きていた」というイメージを流したと言う話しもあるので、ますますもって何が真実なのかわかりにくい。

 

そういう意味では期待したほどの情報は得られなかったが、とりあえず、片岡孝太郎演じる昭和天皇と、トミー・リー・ジョーンズ演じるマッカーサーとの会見シーンは見所ではあった。

 

中村雅俊演じる近衛文麿は日本は欧米に習って、他国を侵略したのだと言い(近衛文麿がそういう発言をした事実はあるのか?)、火野正平演じる東条英機はチラ見せ程度で、このふたりの描写はもうちょっと見たかったような。

 

この映画の公開時、日本の戦争責任を無視し、美化しているという批判もあり、アメリカでの興行成績はふるわなかったようだが、それはともかくとしても、なんとなく映画としての面白みに欠ける出来。

題材的にかなり期待したので、その分ちょっと期待はずれ感はあったかな。

 

ちょっとネタバレ

なにげに一色ゆりの家族が戦後父親である西田敏行以外、全員亡くなっているという描写がさらりと描かれていて切ないものがあった。