引退するする詐欺の宮崎駿氏、今度こそ最後の作品なのか?

吉野源三郎の同名小説『君たちはどう生きるか』とは殆ど関係ないというか、タイトルだけいただいたのかなという感じ。

 

もっと抽象的なお話かと思ったら一応ストーリーはあるのだな。

なんとなくアート作品を描きたいのか、今までのような冒険活劇が描きたいのかどっちつかずな作品という印象。

これまでの宮崎駿の集大成ということもあって、過去の自作に対するオマージュ的場面も散見している。

大伯父の衣装などは、ナウシカのおばば様みたい。

作風は『不思議な国のアリス』とか、宮沢賢治のような雰囲気がある。

シュルレアリスムっぽさもあり、ビジュアル的には面白い部分もある。

そういう意味ではイメージとしてはところどころ良い部分もあるのだが、昨今のアニメは背景が描きこまれれば描きこまれるほど、アニメ部分のタッチとの乖離が気になる。

アートならアートでデビット・リンチくらいまでいけば、訳分からんけどなんかすごいと感じるところなのだが、そのあたりは自分には中途半端に思えた。

 


ネタバレ

 

母親が火事で亡くなり、父親が再婚してお屋敷に行くまではとても面白かった。

これまでの宮崎駿作品とはひと味違うかもと期待が高まった。ちょっと高畑勲っぽい感じも受けた。

個人的には、昔のお屋敷が大好きなので、お屋敷描写が見ていてとても楽しかった。

また、お屋敷のおばあちゃん軍団がとても可愛かった。異世界でおばあちゃんの人形が布団の周りに置かれているとか、キリコが異世界で若返って主人公を助けるなどの描写は結構好きだ。

この2点が良かったので、良しとしようと言う感じの作品。


しかし異世界に行ってからは、なんとなくいつもの駿作品と言う感じで面白さが減退していった。

主人公も出だしがいつもと違う感じだったので期待したが、異世界に行ってからはいつもの駿キャラになっていったように思う。

ワラワラなんかはあざとすぎだし、やたら鳥が登場するが何を象徴しているのかよくわからんかった。

インコに関しては大衆の象徴という説もある。そう解釈すればそんな気もするが、それが正解かどうかはよくわからない。

 

難解なイメージはあるが、ひとつには母親を亡くした少年が、義母となった女性と心が通い合うまでの物語として見られる。

のっけから、後妻が母親にそっくりということで、姉妹なのか?とは思ったけど、それが明確になるまでがちょっと時間がかかるので、もやもやする。

少年の心情も、義母の心情も映画では明確に描かれないので、ここはわかりにくい部分でもあって、突然少年が自分の頭を石で打ち付けたり、急に義母が行方不明になったり、キリコに義母がいなくなればいいと思っていると指摘されたり、義母から「あなたなんて大嫌い」と突然言われたり、すべてが急展開過ぎて「?」となってしまう。

余談だが、私の祖父も同じ家の姉妹と結婚していて、今の時代の感覚で考えるとちょっと違和感はあるかもしれないが、当時は珍しいことではなかったのだろう。

なかなか懐かない義理の息子に対する義母のフラストレーションが神隠しの引き金になっているのか、異世界の中でやっと本音を吐露した義母を前に、主人公もやっと彼女を母親として受け入れる。何故受け入れる心情になったのかもちょっとわかりにくい部分ではある。

とにかくどっちも無表情なので何を考えているのかわかりにくいのが難解な要因かも。

 

また、宮崎駿のモデルと思われる大伯父の後継者を求める物語でもある。

宮崎駿がなんとか保ってきた世界を、後継者は引き継がないという選択をする。大伯父は自分の世界は自分の世界として終わりを受け入れ、主人公は主人公でまた新しい世界を構築していくのだろう。だからこその「君たちはどう生きるか」なのだろう。

 

アオサギはキービジュアルとなるくらい重要なポジションなのだろうが、アオサギの描写は美しいものの、中身の男が出てくるとなんだか醜悪なものになる。この男はいったいなんの象徴なんだ?と疑問だったが、もしかしてプロデューサーの鈴木敏夫なのか?と言う考えに行き着いた。ネットで調べるとやはりそういう説もあるようだ。

鈴木敏夫と考えると大伯父との関係性や、主人公が鈴木敏夫のような友達を持つという結論も納得いく。友でありビジネスパートナーのような存在を新たに必要としていくということなのだろう。

構造としてはわかるが、物語としてはこの少年がいつのまにこのアオサギにそこまでの気持ちを抱いたのかもちょっとわかりにくい。

 

宮崎駿作品としては珍しく、ボーイミーツガールみたいなお話ではないんだなーと思ったが、異世界で若返った母親と行動しているあたりで、これは究極のマザコン映画かとちょっと気持ち悪くも感じた。

構造としては母親から与えられる自己肯定感を描いているのだろうけど、同時に疑似恋人みたいに見えてしまうビジュアルだ。

 

そんなこんなで宮崎駿と言う人物の背景を知っていればなんとなく理解出来るような気がする映画だけど、映画単体だけを見ていると訳がわからなくもなる。

勿論、わけがわからなくても作品に魅力を覚えれば、いろんな象徴やその意味を自然と深めて楽しめるのだろうが、まあ、自分はそこまで深めたいとは思わないかなー。