『ドント・ブリーズ』シリーズのフェデ・アルバレス監督によるエイリアンシリーズのスピンオフ的作品。
『エイリアン』にみられるアート性や、『エイリアン2』にみられるアクション映画としての面白さから言うと、やはり敵わないまでも、まあ、普通にエイリアン映画として楽しめる出来にはなっている。ただ、あまり新鮮味はない。これまでのエイリアンシリーズのいろんな部分を取り込みまくって、まとまった作品と言う感じ。
ネタバレ
時代的には『エイリアン』と『エイリアン2』の間に位置するようで、ノストロモ号を襲ってリプリーによって船外に投げ出されたエイリアンが回収されると言うところから物語がはじまる。
一作目でアッシュが絶賛していたし、適応力に長けた生物と認識していたので、船外に輩出しても生きている可能性は十分あったので、そこに目をつけるのは悪くない。
ただ、素朴な疑問として、慣性の法則からすると、船外に輩出された力でエイリアンはずっと同じ速度で宇宙を彷徨うことになると思うのだが、何故か繭状態の姿になり宇宙空間に停止した状態で発見される。これは爆破したノストロモ号の部品にも言えることだと思うのだが、エイリアンのまわりにある部品も爆破の速度で宇宙に漂っているようには見えなかったなー。
そこに若干引っかかるものの、これまでのエイリアンシリーズにはなかった、船内の重力問題に関しては一応、どういう原理かは知らないが重力装置なるものがあるという設定になっていて、このあたりのリアリズムには多少気を遣っているようだ。
この重力装置の作動がサスペンスに一役買っているのがちょっと新しい感じ。
『ターミネーター』では、毎度敵のターミネーターと味方の人間もしくはターミネーターの1対1の戦いがフォーマットと化しているが、『エイリアン』でも毎回アンドロイドを1体出すのがフォーマットと化している。なんで、毎回1体なんだって話ではあるが。
今回は黒人タイプのアンドロイド。このあたりにポリコレの気遣いを感じる。
このアンドロイドの不安定さが多少サスペンスを盛り上げるのだが、アンドロイドとしての魅力はちょっと足りない。
ただ、アッシュ型のアンドロイドが登場して絡むあたりがちょっと面白い。既に故人となったイアン・ホルムをディープフェイクなどのAI技術で再生したということで、こうした技術の向上で良くも悪くも故人が何度でも映像に甦る時代になった。
イアン・ホルムはやはり魅力的な俳優なので、AIであっても存在感がある。
あと、この映画で面白かったのは、やはりエイリアンの酸性血液が空中に舞っている中を移動するシーン。こういうアイディアはなかなか良かった。
しかし、登場人物には魅力があまりなく、基本的に殺される人間が皆若いので、ティーンエイジャー版エイリアンというか、どことなくスラッシャームービー的雰囲気がある。
また、エイリアンのように予想の付かない展開ということはなく、まあ、基本的にはいつも通りのフォーマットで終わっている。
こうしたシリーズものには、毎度どこかもうひとつ突き抜けたものを期待するのだが、結局今回もそこには至らない感じ。