今回は趣向を変えて、これまで私が見てきた映画の死に方トラウマ映画ベスト10です。

ネタバレもあるので、未見の方はご注意ください。

 

サルバドールの朝

スペインの公式の死刑執行法として1978年まで行われていた鉄環絞首刑ガローテの処刑法が克明に描写される。

死刑囚の首にかけた鉄の輪を死刑執行人がうしろからぎりぎりと締めて殺していくもので、殺される方はじわじわと長く苦しみながら死んでいく。途中でこの絞首刑の内容が丁寧に説明されるので、その時点で恐怖を覚えるし、自分がこの処刑法で殺されると知った時の主人公のショックの表情が見ていてつらい。実話だから余計に怖い。

主人公サルバドールを演じたダニエル・ブリュールが他の映画に出演していると、この時殺された姿がフラッシュバックしてしまう。

 

 

白バラの祈り

処刑法としてはギロチンなのでガローテほど陰惨ではないが、そこにいきつく過程が見ていて辛い。

正義を貫こうとナチスに立ち向かった若者たちがいともあっさりと理不尽に処刑されていく。

裁判から処刑までがあっというまで心の準備もままならない白バラのメンバーの痛み、特にそんな形で子供を失う親の気持ちを考えると、もうたまらない。僅かに許された親子面会のシーンは号泣した。こんな恐ろしい時代に勇敢に戦った若者たちに敬服する。

直接的に殺される描写はないが、ラストの音だけでも耳に残る。こちらも実話だから余計に怖くて、切ない。

しばらくは通勤途中の電車の中で思い出しては嗚咽した。

 

マッドマックス

基本的に焼き殺されるというのが自分の中ではかなり嫌な殺され方上位にあって、加えて、正義感のある良い人が悲惨に殺されるのがかなりトラウマになる。

この映画でも、マックスの友人であるグースの殺され方は数日間脳内をフラッシュバックして気を滅入らせた。

生きたまま焼き殺されるというシチュエーションといい、グースが血の気は多いが基本的にまっすぐな正義感を持っている人だったから、こんな殺され方はあまりに酷すぎる。しかも火をつけられる瞬間まで、必死に逃げようとするグースの恐怖の表情がリアルで、悲惨さに拍車をかける。病室のカーテン越しに見えるグースの火傷で反り返ったような影かこれまたリアルで辛い。

おかげで、長年『マッドマックス』を見直すことが出来なかった。『マッドマックス』は自分にとってはもはやホラー映画より恐ろしい映画だったのである。

フュリオサを観た流れでなんとなくこの1作目を見直したけど、やっぱりシリーズ中一番陰惨な雰囲気。暴走族のクレイジーっぷりも洒落にならん感じ。でも、最後にマックスに殺される男が所詮下っ端でグースを焼き殺す時もびびって躊躇っていたのに無理矢理ボスにやらされた感じだったので、暴走族仲間の中で一番怖い思いをして殺されるのはちょっと気の毒な気もする。ボスがあっさり大破して死んでた事を思うと余計にね。あのボスこそグースと同じ苦しみを味わうべきだったのに。

 

 

ヒッチャー

主人公の彼女が車に両手両足をしばられ、アクセルを踏めばふたつに引きちぎれるというシチュエーションが最悪だった。

必死にそれを止めようとする主人公、その間ずっと恐怖に怯えるヒロイン。そしてついにアクセルが踏まれ…。

直接的に殺される描写はないものの、それはもう嫌な後味としてずっと頭に残ってしまった。

 

 

ふたり

自分がもう助からないと悟る瞬間って最も怖い瞬間ではないだろうか。

私はそういうシチュエーションに弱い。

この映画も主人公のお姉さんが車に挟まれ、自分が助からないと悟るシーンが最もつらい。

運転手さんが必死に車を押さえるが力尽きて、姉は車に押しつぶされる。

こんなシチュエーションに実際に遭遇したら私は一生トラウマになって立ち直れないかもしれない。

 

 

悪の法則

こちらはボリートという架空の処刑器具が怖い。

一度首にかけられたら二度と外すことが出来ずじわじわと首を締め付け、やがて首を切断する。

ガローテにも通じる怖さもあるし、首にかけられたブラピが自分の死を悟るところも怖い。絶対に助からないと分かっていながらも必死に抗う様が見ていてつらい。

とにかく逃れられない死を悟り、じわじわとその恐怖を味わいながら死んでいくのは最悪だ。

 

 

エクソシスト3

この映画のホラーとして優れた点は直接殺しを見せるのではなく、想像させる恐怖だ。そこは小説家であるブラッティが自らメガフォンを撮った映画だけのことはある。

台詞からイメージさせられる戦慄。この映画では随所にそういう恐怖を味わう事が出来るが、もっとも嫌な気持ちにさせられたのが、ダイア神父の殺され方だ。ダイア神父はカラス神父の親友だった。そんな彼がこんなひどい殺され方をするなんて…。

彼は病室で意識はあるが体が動かなくなる薬を撃たれ、全身の血を徐々に抜かれていくのを見ている事しかできない。助けを呼ぶことも出来ず、ただただじわじわと殺されていく恐怖を味わうことしか出来ないのだ。

ダイア神父の血は一滴もこぼれることなくケースに入れられて遺体の横に並べられている。

ブラッティ、怖いこと考えるなー。

 

 

シャドーメーカーズ

やはり、ルイス・スローティンの1946年に起こった臨界事故の再現シーンが怖い。

ここでも、ジョン・キューザック演じる科学者が被爆して、自分の被曝量を自ら計算し、自分が助からないと悟るシーンが最も怖い。

表面上は元気でも、この先どんどん悲惨になることはわかっていて、でもそれを止めることは誰にも出来ない。こんな恐怖があるだろうか。

彼の手が被爆の影響で太く腫れ、苦しみながらなかなか死ねずにいる描写はもはや地獄。

東海村JCO臨界事故で被爆して亡くなった篠原さんや、大内さんの悲惨な記録を知るとなおさら滅入る。

 

 

ターミネーター2

もうおわかりのことと思うが、私は絶対に助からないと悟った上でじわじわと死ぬような場面がトラウマになりがち。

この映画においてもマイルズ・ダイソンの死に方が結構トラウマ。

爆弾のスイッチを落とせば爆破と共に自分が死ぬことがわかっているけど、すでにスイッチを支える力が残っていない。

その死の恐怖がリアルで、彼がついに力尽きてスイッチを落とす場面はしばらく尾を引く。

 

 

サイレントヒル

マッドマックスでも言ったが、やっぱり焼き殺されるというのが嫌すぎる。

この映画でも少女が焼かれて苦しむ描写が辛いし、その後、シビル・ベネット巡査が焼き殺される描写もかなりしんどい。

 

 

番外編

炎熱商人

映画ではないのだが、昔NHKでやっていたこのドラマを子供の頃に見て未だにトラウマになっている。

太平洋戦争の最中にフィリピンを占領していた日本。現地の人間に対して非道なふるまいをする日本軍の中で憲兵隊の馬場大尉は良心的で立派な軍人であったが、戦後になって彼が悲惨な末路を遂げたことがわかる。

アメリカ軍に爆薬を積んだ車で特攻する直前に車から飛び降りた大尉は、日本軍に憎しみを抱くフィリピン兵に見つかり、体のあちこちをちょっとずつ削られ、塩をすり込まれて、苦しみながら死んだと言うのである。

とにかく私はいい人が悲惨な殺され方をするのが耐えられないので、このドラマを思い出すと気が滅入ってしょうがない。

というか、殺し方エグすぎるだろう。これは一生もんのトラウマだ。