去年島本和彦『アオイホノオ』の漫画とドラマにはまった関係で、漫画家の自伝ものに興味がわいて、藤子不二雄A『まんが道』シュガー佐藤『石ノ森章太郎』石ノ森章太郎『章説-トキワ荘の青春』長谷邦夫『伝説トキワ荘の真実』などを立て続けに読んだ訳だが、その流れでこの映画の存在も知った。

 

しかし、評価がすこぶる悪い。一瞬見るのを止めようかと躊躇うほどに低評価だ。

例によって期待値が薄かった分、まあ、そこまで悪くはないかなーと言う感想だ。低評価になるのも理解出来るが、見所もある。

思ったよりは、トキワ荘のエピソードを再現している部分もあったしね。赤塚不二夫が手製のテーブルひっくり返しエピも再現されていた。

トキワ荘と言うとよく出てくる中華屋松葉も登場してた。今もこの中華屋さんは現存している。

 

この映画の評価が悪い原因のひとつである、キャストが誰が誰だかわかりにくいと言うのは確かにそうで、同じようなめがね、同じようなベレー帽と混乱を覚える。

もともとトキワ荘というと、手塚治虫をはじめ、藤子不二雄石ノ森章太郎水野英子以外は私は殆ど知らないメンツ(トキワ荘の住人ではないが、つのだじろうとかつげ義春はわかる)。寺田ヒロオ『まんが道』などで存在は知ってはいるが、彼の作品自体にはなじみがない。

藤子不二雄の漫画に登場する名物ラーメン好きキャラクター小池さんのモデルとなった鈴木伸一は風貌が小池さんに近かったので、なんとなくわかったが、それでも時々めがねかぶりで藤子不二雄Aと混乱する。藤子F不二雄に関してはベレー帽キャラがつのだじろうとかぶるもんだからこれまた混乱する。まあ、藤子F不二雄を演じるのが阿部サダヲなので、慣れればわかってはくるのだが、薄暗い画面だし、ちょっと見分けるまで時間がかかる。

石森章太郎赤塚不二夫もあまり本人に似てないので、なかなかぴんとこない。

石森章太郎のお姉さんも美人と評判だったし、実際写真を見るととても綺麗な人なので、演じる女優さんももう少しおきれいな方を…と思ってしまう。

実は最近まで石森章太郎赤塚不二夫が仲良しだったとは知らなかった。

今年トキワ荘ミュージアムで『ふたりの絆 石森章太郎と赤塚不二夫』展を見てきた。ふたりの友情は微笑ましいものなので、そのあたりももっといろいろ描いてほしい気がしたが、映画は割とあっさりとしていた。

 

見所と言えば、トキワ荘の再現はよく出来ていた。

この映画は1996年に公開されたものだが、トキワ荘は1982年に解体されているので、トキワ荘内部はセットで復元したものと思われるがよく出来ている。でもトイレの位置は違うような。

そして外観もセットで作ったのか? 似た建物を見つけたのか?

2020年にはトキワ荘はミュージアムとして完全に復元されている。私も二度ほど行った。

実際に復元されたトキワ荘を見ているので、映画でもそれらの暮らしがリアルに再現されていて面白かった。

 

それにしても昭和の雰囲気を再現しようとしたのか、映画のトーンが暗い。

主役が寡黙で真面目な寺田ヒロオだから余計に暗い。

藤子不二雄Aによれば、もっくんは寺田ヒロオの雰囲気がよく出ていたようで、私も『まんが道』からイメージする寺田氏の雰囲気はあったと思う。

寺田ヒロオの晩年を調べたが、最後はとても寂しい感じで、やっぱり真面目でいい人過ぎちゃったのかなーという気がする。

頼れる兄貴みたいな立ち位置を苦にしてた部分もあったと聞く。それでも若い漫画家たちにとって彼の存在はとても有り難かっただろうなーと思う。

そんな背景を知っていると映画のラストもなんとも物寂しい気がする。

 

皆が望むトキワ荘の映画はこれじゃない感も非常にわかるし、どうせなら、もうちょっと面白いトーンでトキワ荘を描いた映画が見たいとは思う。でも、まあ、これはこれで、ありなんじゃないかなーと、欠点はあるけどそう悪くはなかったかなーと思う。