私は山田貴敏の原作もドラマも観たことがないのだが、テレビで放映していたのでこの劇場版のみをなんとなく観てしまった。
イメージ的には離島にたったひとりの医者と島民の交流を描いたヒューマンドラマなんだろうなーっと。
離島にただひとりの医者と言うと、どうしても和田慎二の『呪われた孤島』を思い出してしまうのだが、勿論あんなおどろおどろしい話ではない。
それにしても、劇場版でありがちの、「メインキャラの誰かが死ぬ」っぽい雰囲気で観客を動員させようというあざとさがあるなー。
この映画を観たあと、他の人のレビューを読んだが、ドラマファンが憤慨していて、きっと原作やドラマの方は良いものなのだろうと思うが、この映画に関しては、あんまりな話だなーという印象。
ということでここよりネタバレで。
ネタばれ
まず主役のコトー先生は、20年間この島で孤軍奮闘していたようだ。
いずれ自分が引退、もしくは病気で倒れた場合のことは何も対策してこなかったのだろうかという疑問がわく。
医者を志した島の少年は挫折して帰ってくる。もしかして彼が唯一の希望だったのか?
そんなこんなで長年ひとりで患者を診てまわったことによる疲労なのか、突然急性骨髄性白血病になる。
「これはまたベタな…」とつい思ってしまうような、悲劇と言えば白血病というイメージがある。
VIVANT堺雅人が早く治療した方がいいとアドバイスするが、なぜか行動を起こさないコトー先生。死にたくないと泣くくらいなら急いで治療に着手すべきでは?と思うのだが、なぜ行動を起こさないのかわからない。
島には自分ひとりしか医者がいないから、島民を放ってはおけないと思ったのか? でも、自分が死んだら元も子もないだろうに。しかもこれから子供が生まれるというのに…。
勿論骨髄バンクに登録したとしても、すぐにドナーが現れる訳でもなく、一端治療のために島を出たら戻れなくなるかもしれないが、それでもやっぱり努力はした方がいいと思うのだが、なぜか死期を早めるような行動ばかりして、病気はそうそうに悪化し、あっというまにふらふらになるコトー先生。
そんなときに台風がやってくる。
多くの人が指摘しているが、沖縄の離島で台風などしょっちゅうきて、対策など慣れていると思われる島民がなぜか次々と怪我をする。
これまでにない大型台風だったのか?
そんな中ふらふらになりながら治療をするコトー先生が痛々しすぎて、何を見せられてるんだろうという気分になる。
挙げ句、妻は切迫早産で、ついに倒れるコトー先生をただ黙って傍観する島民。誰かかけよって先生を助け起こすなりしないのか?
やっと駆け寄った時任三郎が「俺は諦めない!」と叫ぶだけで役立たず。
しょうがないから自力で起き上がるコトー先生。かわいそうすぎるだろう!
自分の子供を取り上げてほしいからと、島でただひとりと思われる産婆さんの手術を行う。ついさっき気絶して、ふらふらの医者の手術。怖いわー。
で、精根尽き果てたコトー先生はそのまま死亡。
めちゃめちゃ後味悪すぎではないか?
さすがに、これではひどすぎると思ったのか、突然、何もかもが有耶無耶のまま、ハッピーエンドな雰囲気で終わるが、それが現実なのか幻想なのかもわからず、なんだか釈然としない。
とにかくこれでもかってくらい不幸のオンパレードで、ただただ島民が主人公に依存し続ける展開に薄寒いものを感じた。
こんな話を美談ぽくしてるけどこれって一種のブラック企業に勤めた主人公が過労死する話だよねー。
長年人材なり体制なり対策を何もせず、現状仕方ないとばかりに個人の情と頑張りって言う根性論頼みでやってきた結果と言うか…。
この島は高齢者であふれる日本の未来の姿だと語られていたが、これが日本の未来に警鐘ならすドラマなのだとしたら悲劇も納得なのかなー。公開時2022年末なんでコロナ禍もあってオーバーワークしていた医者がいたりもしたから、そういうことを描きたかったのか???
意図がよくわからんけど、きっと原作やドラマの方は良いものだったと予想されるので、こんな皆のために主人公が死んで感動みたいな安易な結末ではファンでなくても納得出来ないわ。