ネタバレあり
児童文学であるムーミンシリーズの作者として知名度の高いトーベ・ヤンソンの伝記映画。
実は私はそれほどムーミンと言う作品に親しんではいない。
実家にシリーズ全巻揃っていたが、私が読んだのは大人になってから。しかもわざわざ図書館で借りた。
読んだのも『ムーミン谷の彗星』と『ムーミン谷の冬』の2作くらいだったかと。
(余談だけど、ムーミンの翻訳家は私の友人の祖父だったりする)
アニメーションの方もほとんど観たことがなく、作者から不評を買った1972年版を数話、比較的原作に近づいた1990年を数話観た程度。
それでもキャラクターとしてはなじみ深く、埼玉のムーミンバレーパークにも遊びに行ったことがある。
なんで、それなりにムーミン誕生秘話的なものを期待して映画を観た訳だが、そういう期待にはあまり応えてくれないというか、トーベにとってムーミンというのは、メインである芸術活動の気分転換に書いたようなもので、映画を見る限りそこまで思い入れがあるようにも見えない。
ムーミンの連載や出版が彼女にとって大きな経済的支えにはなったようだが、サイン会で子どもたちが集まり人気者になっても、自分が人気者になった訳ではないと、結構クールに突き放している印象。
それより映画のメインとなるのは彼女の恋愛事情というか、主に演出家のヴィヴィカ・バンドレルとの恋愛と、哲学者で政治家のアトス・ヴィルタネンにスポットが当てられている。
自分はトーベ・ヤンソンの恋愛事情にそれほど興味があるわけでもなく、興味がなくても面白いと思えるような恋愛エピソードという気もしなく、やっぱり同性同士のラブシーンをずっと観るのはちょっと居心地が悪く、結果的に映画にはあまり乗れなかった。
パリや北欧や、トーベのアトリエや、ムーミンのミュージカルという無謀なような企画の裏舞台をチラ見出来たのは良かったし、丁度父を亡くしたばかりなので、トーベが父親を亡くすあたりの描写はなんとなく感じるものはあった。
ムーミンで成功はしたが、芸術家としての成功はなかなか満足出来るものではないという葛藤も皮肉なものである。
あと、ムーミンバレーパークに行った時に、ムーミンのコミックが新聞に連載されていて、トーベの弟が描いたと言うのを初めて知ったので、そのあたりのエピソードも描かれていたのは良かった。
アトス・ヴィルタネンはスナフキンのモデルとも言われているようだが、それらしい描写は映画からは感じられなかった。
結婚まで考えたアトスだが、一緒にいても幸せではないとヴィヴィカを思い続けるトーベの告白はアトスの立場に立って考えると実に切ない。
実際アトスと結婚に至らなかったのはトーベが子どもを望まなかったからだという話もあるので、こういう伝記もののフィクションと事実の関係はつねに検証しないと間違ったイメージになってしまう。
トーベ以上に恋愛に自由奔放なヴィヴィカという恋人を持った葛藤というあたりも、自分はあまりぴんとこない要素かな。
こういう人物は確かに魅力的だし、一時心を奪われるのはわからんでもないのだけど、同じように割り切れる人間でなければ続かない。
もっとも実際はヴィヴィカとは恋人関係は終わっても、その後もつきあいはあったようだが。
そして最終的には映画の最後に現れたトゥーリッキ・ピエティラがトーベの最後のパートナーとなったようだ。
トーベを演じる女優さんは雰囲気はなんとなく似ている所もあったが、トーベの方がもっとひょうきんでぶっとんでいる感じがする。
最後に本人のダンス映像が流れていたけど、若干いっちゃってるなーとさえ思う。