『サスペリア』『インフェルノ』と続けて観たので、のりかかった船的にこちらも再見。アマプラ無料だったし。
とにかく駄目駄目な作品という印象しか残ってなかったんだけど、今回見直したらやっぱり駄目で、なんていうか先の二作に比べるととにかく雑な印象。
これって、漫画家が年をとるにつれて画力が落ちていくのと似ているような。
作風も先の作品と違い過ぎちゃってシリーズとしても統一性を感じない。せめて原色カラーは前作とそろえて欲しかった。
なにより、涙の母は『インフェルノ』に出てきたアニア・ピエローニみたいな金髪美女を期待しちゃったんで、なんだか品のない女性に変わってしまったのが一番のがっかりポイントよ。
ということで、予算もなかったのだろうが、文字通りやっすい映画になりさがってしまい、これがシリーズ最終作と言うのは個人的には認めんって感じ。
音楽もゴブリンのメンバークラウディオ・シモネッティなのに印象薄い。
何もかもが残念な完結編である。
ただ、サスペリアシリーズとして観なければ映像的には普通というか、そこまで悪いものではない。
ホラー描写以外のシーンは良くも悪くもアルジェントもこんな風に普通の映画が撮れるんだなーという気分になる。
ネタバレ
アーシア・アルジェントは悪くなかったし、母親であるダリア・ニコロディと役の上でも親子共演も悪くない。
しかし、母親が白魔女でかつてドイツに住む嘆きの母と戦った的な設定はいまいちだった。だから嘆きの母が弱っていてスージーにあっさり殺されたとか、そういう後付け設定いるかなーって感じ。
母親の力を受け継いだ娘の因縁の対決ってところがもうこれまでと作品とトーンが違いすぎる。いや何その魔女バトルもの展開って感じ。
冒頭、『デモンズ2』でサラを演じていたコラリーナ・カタルディ・タッソーニがかなり悲惨に殺されるのだが、その展開もあまりに唐突で唖然とする。
なんか殺しに至るタメが一切ないので、すべてが唐突で理解不能。恐怖を味わう間もない。ただただ絵面が残酷でショッキングだけっていうね、ホラー映画末期の悪しきスタイル。
かつてはヒッチコックに影響を受けたサスペンスの名手だったのにすっかりルチオ・フルチ化しちゃったのね。
この映画で唯一印象に残るのはアーシア・アルジェントが魔女に追われて電車の中を逃げるシーンかなー。
涙の母の手下魔女たちがわらわら登場するけど、そのひとりがなぜか日本人。この手下魔女たちも品がない。現代的と言えば現代的だけど、美しくない。
アーシア・アルジェント以外の登場人物は唐突にぽんぽん殺されるだけの印象。
ヨハネス神父と言う役で『サスペリア』に出演したウド・キアも登場。別人みたいに年取ってたなー。
彼もやっぱり唐突に殺されてた。
魔女の復活によってローマが悪魔付きで大混乱という描写もいまいちわかりにくいというか、こういうスケールの大きい展開にアルジェントの持ち味が全然かみ合ってない印象。
涙の母は『インフェル』では図書館に住んでるのかと思ったけど、なんか違う館が登場。魔女の住処のまわりで甘ったるい臭いがする設定はどうなったんだ。まあ、シリーズと言ってもたいした整合性は考えていないようなのでいいんだけどさ、中途半端につながりを示すようなワードが登場するのがまたなんともね。
涙の母が変なチョッキ着て、お尻丸出しスタイルなのもがっかりよ。返す返すも『インフェルノ』では妖艶で美しい涙の母だったのになー。
で衣服をあっさり剥ぎ取られて魔女帝国絶滅展開もシリーズ最後の盛り上がりとしてはしょぼすぎる。
『インフェルノ』もぽかーんの結末だったけどそれ以上にぽかーん過ぎる結末。
最後はいつもの屋敷からの逃走。先の作品と違ってあっさり逃げ出せずに、なんか『フェノミナ』みたいなウジ風呂に落ちたりもするけど、魔女が死んだ終盤でそのイベントはかったるいというか、いらんだろーって感じ。
珍しく主人公ひとりが助かるというパターンではないが、だから何という感じもするね。