あたくし、あんまりブランドに興味が無いというか、ブランドにお金をかけられる富裕層でもないので、GUCCIの商品も購入したことはございません。
だからGUCCIに対してさほど興味もなく、GUCCIのブランドの成り立ちなどもまるっきり無知でございました。
この映画も前情報はキャスト以外は殆どなかったので、単純にGUCCIブランド成り立ちの物語かと勘違いした上に、グッチ一族の暗殺事件も知らなかったのです。
なので、全然自分の知らない世界の事を知れたようで、大変興味深く面白かったです。
まあ、ストーリー自体は新鮮味はないというか、ゴシップネタな感じを受けるのですが、やっぱりGUCCIという背景と、演じるキャストの素晴らしさ、華やかな映像で楽しめました。
リドリー・スコット監督はね、近年では『悪の法則』がとても面白かったのですが、『悪の法則』に及ばないまでも、こちらも楽しかったです。
アメリカ映画ですが、監督がイギリス人と言うこともあるのか、音楽がユーリズミックスとか、ジョージ・マイケルとか、デビッド・ボウイなど80年代90年代あたりのブリティッシュロック系が多いのです。グッチはイタリアというイメージだから、何故この曲のチョイスなのかというのは気になりますね。
ネタばれ
なんといっても、やっぱりキャストが見所ですよね。
ガガ様は魅惑的で貪欲なパトリツィアにはまっていたし、はじめは運送業者で経理を務めるセクシーだけどいまひとつアカ抜けない女性が、やがてハイブランドに身を包むゴウジャスな女性へと変わっていく様が見事でした。やっぱりここぞと言う時にみせるオーラーがすごい。夫を暗殺しかねない情念もリアルでした。
アダム・ドライバーもいい味出てました。カイロ・レンの時は好きになれない俳優と思ったけど、他の作品で観る彼はいいんですよねー。
ジェレミー・アイアンズも素敵なおじさまっぷり。
対するアル・パチーノもいい存在感でした。ばか息子の為に破滅する様、それでも息子を抱きしめる父親心は、どこか、『ゴッドファーザー』のマイケルとフレドみたいな関係にもみえます。
ジャレッド・レトはやり過ぎ感はあるけど、相変わらず言われなければ彼と気づかないレベルの変身っぷりです。
実際のマウリツィオ暗殺事件について調べるとやっぱり映画とはちょっと趣が違うというか、映画の方が単純化されわかりやすくなっているなーと感じます。
それにしても、映画を見終わって、この物語をどう受け止めたらいいのだろうと考えてしまった。
マウリツィオとパトリツィアの恋愛は、まずパトリツィアのぐいぐいっぷりがすごい。なんかこう、恋愛の積極性みたいなものは学ぶ点あるなーなんて思ってしまいました。
マウリツィオも大金持ちでありながら家柄を捨ててパトリツィアと結ばれる道を選択するあたりの純愛っぷりは好感がもてます。
運送会社で働き、意外にもその時が一番幸せという皮肉。
しかし、長い年月、育ちの違いが顕著となり、マウリツィオは自分と住む世界が近い愛人を選び、パトリツィアはマウリツィオの父親の言う通り結局地位とお金を欲する貪欲な女性へと変貌していく。
かつて、あれほど自分たちを受け入れてくれた伯父アルドに対する仕打ちはひどいものがあるし、その息子パオロの晴れ舞台をつぶす様も非道。彼の妻がひたすらオペラを歌う演出が悲しい。パオロってあそこまで酷評されるほどデザイナーとして才能なかったんですかね?
結果的に一族の確執が、彼らのブランドを他者に奪われる形となり、シェイクスピア劇のような悲劇に終わる。
単純に富や名声が人を狂わせると言えばそれまでなのだが、なんというか、足るを知るということは大事なことなのかなーと言う気も致します。
あれほどラブラブだったのに、愛が消えたマウリツィオの冷淡な態度は心痛いものがありました。
お久しぶりのサルマ・ハエック演じる占い師によって女王になるとまで予言されたパトリツィアは結局獄中に入ることになるのですが、その後の彼女について調べると、かなり優遇されてやっぱり女王のような扱いを受け、かなり快適だったとか。なんだったらずっと獄中暮らしでも良かったって感じの勢いで、出所後も悠々自適に暮らしている模様。
なんていうかパトリツィア、やっぱりただ者じゃないですよねー。
実際のパトリツィアとマウリツィオの写真を観ても、マウリツィオより明らかにパワフルにみえる肉食系で、これは草食系のマウリツィオが彼女に食われちまうなーという印象でした。そういう意味でもガガ様とアダム・ドライバーは適役だと思います。