なんだかんだ、エドガー・ライト監督の作品は欠かさず観てしまいますね。

ただ、これまでのコミカルでコメディ調な作品とは異なり、物語は割とシリアスで終始辛く苦しい気分を味わいます。

映像のギミックも抑え気味で、あまり奇をてらった演出はありませんが、それでも、鏡のシーンなどは秀逸です。

映像は今風ですが、ストーリー事態はゴシックホラーっぽいというか、クラシックな感じがします。

 

60年代のロンドンに憧れファッションデザイナーを目指す主人公が知る、ロンドンの闇と言ったところでしょうか。

自分はロンドンに関しては、ニューヨークなどの都会とは違う、どこか古さを残す素敵な街というイメージなんですが、現在のロンドンはかなり俗っぽい雰囲気なんですね。

 

主となるふたりの女の子、トーマシン・マッケンジーアニャ・テイラー=ジョイは大変魅力的で、60年代のファッションも可愛く、眼福でした。

 

 

ネタばれ

まず、主人公が田舎から都会へやってきて、都会の怖さや冷たさを味わうあたりは胸が痛いというか、そこから飛び出して下宿する流れが実に丁寧に描かれている。

その部屋に過去に住んでいたサンディという女性となって過去にタイムトリップし、その女性に憧れて彼女のスタイルをまねていくことで、次第にロンドンになじんでいく主人公。

しかし、その憧れのサンディが枕営業で次第に荒んでいく状況を追体験していことで主人公も精神状態もどんどん不安定になる。

 

彼女の前に現れるテレンス・スタンプ演じる謎の老人が、サンディを殺した犯人と思われるジャックであるというのはまあ、ミスリードであることはすぐにぴんとくる。

そして、下宿の女主人も途中から、演じる女優が違うにも関わらず、途中から「あれ?この人サンディじゃない?」と言う気がした。

殺されたと思っていたサンディは生きていて、実は自分を性的に搾取していた男たちを皆殺しにしていたと言うオチになるのだが、自分が住んでいる部屋の床や壁が実は死体だらけだったというのは、古典的なオチだと思う。

殺された男たちは霊体となって、主人公に女主人を殺すよう求めるが、いまいち彼らに同情する気になれないので、なんだか哀れさを感じない。

それよりただでさえ不安定で頭がおかしいと疑われている主人公の下宿が犯人もろとも燃えたら、主人公が疑われるのではないかと心配になったのだが、まあ、そこはジョンがいるからなんとかなったのだろう。

 

とにかく主人公が過去に振り回され、どんどん窮地に追い詰められていく様が苦しく、彼女を好きになる黒人の男性ジョンの存在が唯一の救いではあるが、こんな不安定な主人公によくこのジョンはつきあってるなーと感心してしまう。ジョンの身近に主人公と同じ第六感を持つ存在があったからこそ、彼女を理解出来たのかもしれないが、それにしても、夜の行為の最中にパニックになったり、突然元ルームメイトをハサミで刺そうとしたり、そうとうヤバイ感じなんで、普通なら距離を置こうとするよねー。

で、この元ルームメイトをハサミで刺そうとした件はジョンの説得で事なきを得たのか、大事にならなかったのがちょっと不思議。

あと、元ルームメイトがにくたらしいので、もうちょっと溜飲の下がる展開があってもよかったのになーとは思う。

 

最初に精神疾患で自殺した母親の霊が姿を現すので、この母親が何か要になるのかと思ったらその後はまったくお話に絡むことがないから、最後にまた母親の霊が現れても、なんだかぴんとこない。

女性が性的に搾取されていた時代を知ることが、この主人公の現代での成長にどのように結びついているのかもよくわからないので、最後にあっけらかんとファッションデザイナーで成功していることにも違和感が残る。

 

観ている間は面白かったし、先がどうなるのか気にもなったが、終わってみるといまいち腑に落ちない感じはあるが、映像的にはやはり一見の価値はあるかなーと思う。