役所広司が時々ピエール瀧に見えるのなんでだろう…。髪型のせいかな…。

 

ということで、役所広司が主演だし、評判がいいので観てみました。

原作は佐木隆三の『身分帳』

主人公は実在の人物田村明義がモデルらしい。

 

とりえあず何故か役所さんの裸のシーンが多い映画であった。

 

ちなみに役所さんは長崎出身だが、福岡弁(博多弁)もこなしていたように思う。

 

 

ネタバレ

どう受け止めたらいいんだろう。と言うのが見終わった後の感想だ。

主人公三上は不幸な生い立ちを持ち、ヤクザ、殺人という経緯を経て、ムショから出所する。あまつさえ高血圧という無理のきかない体。あまりにハンディが多すぎて生活保護を受けるという厳しい状況。それでも主人公は免許取得や就職など前向きな努力を重ねる。

そうした背景を持った人間が社会でいかに更正して生きて行くかという難しい問題。

現実は厳しくもあるが、三上の後継人になってくれる弁護士夫婦や、スーパーの店員、役所の人間、小説家志望の若者など信じられないくらい温かい人たちとも出会い、徐々に普通の生活を取り戻す。

この人たちがあまりに温かいので、この世界にここまで親切な人がいるものだろうかと疑ってしまうほどだ。

しかし、三上が世の中に迎合することは、同時に心の痛みを見ない振りをすることでもある。

そうした矛盾に耐えかねたかのように、元妻とも連絡出来て、人生上向きになったかと思われた矢先に三上は死亡する。

この種の話は、なんだかそういう流れになりそうな予感が最初からしてたのだが、やっぱりそうかーという気分だ。

 

役所さんの優しげなところ、切れたら怖いところ、そういう絶妙さは役にはまっていたし、そういう役所さんの演技があったから観られたけど、なんだか、どこかやるせなく、空しく、苦しい気分になる映画。

でも、この世界の優しさに触れ、心から涙し、最後にきて主人公はそれなりに救いのある人生を送れたとも言えるのかもしれない。役所さんが人の優しさにふれ涙するところはやはりぐぐっとくるものがある。

そして少なくとも彼の死を痛む存在がいることも、誰かの心に残る存在になれたということも、良かったと言えるのかもしれない。

三上がやりすぎの暴力に走ってしまうのも、正義感からくるものだと思えばどこか憎めないが、正義感を盾に己のフラストレーションを発散しているようにもみえ、やっぱり暴力はコントロールすべきものではあると思う。

『三匹が斬る!』みたいな時代劇だと悪人をばっさばっさと斬ってすっきりみたいな話しで終わるけど、現代でそれをやると社会では受け入れがたい。役所さんが演じる千石も、三上も、根っこは同じもののように感じるし、千石が現代を生きてたらこんな感じかもしれないなーなんて思ったり。