また、つまらぬものを見てしまった。

 

ルパン三世石川五右衛門みたいな心境だ。

 

ストーリーもつまらん。

ホラーとしてもつまらん。

いったい、何を目的に見ればいいのだろう。

 

清水崇監督の『こどもつかい』もなかなか酷かったが、これはそれ以上に酷い。

『呪怨』以降、この方は才能が失われてしまったのだろうか。

と言う『呪怨』も、Jホラーはガチ怖いからと言う理由で私はアメリカリメイク版しか観てないのだけど、あれもストーリーらしいストーリーはなく、ただ呪われた家に関わった人間が不条理に死んでいくだけの話なので、もともとこの監督はストーリーテラーではなく、ただ怖いシチュエーションを生み出す才能がある人だったのかもしれない。

それをこの映画に関しては下手にストーリーをひねろうとするものだから、お話も怖がらせ方も全部中途半端に終わった感じ。

 

自分は本来、こういう村にまつわる都市伝説的なホラーは嫌いじゃないし、公開当時は映画館まで観に行くつもりだったのだが、あまりに評判が悪いので、レンタル待ちしていたら、丁度アマプラで無料で観られたので、その勢いで観た。

しかし、これはもう映画館は勿論レンタル料だってもったいない作品だ。

 

ちなみに、この監督、懲りずに『樹海村』『牛首村』と村シリーズで映画を撮っている。

『樹海村』も評判がすこぶる悪いし、『牛首村』もこの流れだと期待出来ないのでもはや観ることはないだろう。

 

 

ネタばれ

 

元ネタは福岡県にある心霊スポット旧犬鳴トンネルと、そのトンネル近くにあるとされる犬鳴村伝説から来ているが、元の都市伝説と合致するのは入り口に「この先、日本国憲法は適用しません」という看板があるというくらいで、あとは殆どオリジナル設定。

その看板の文言だけはインパクトあるが、お話の絡みはたいしてなかった。

 

とりあえず犬食いの習慣がある村が、電力会社のダム建設の為に村人が皆殺しにされ、村ごとダムの底に沈められたと言う、福岡の電力会社のイメージを貶める意味では一役買ったかもしれない。

そんなことに一役買ってどうするんだという気もするけど。

 

その非道なる電力会社で村を滅ぼす音頭をとった男の末裔である高嶋政伸

犬鳴村の生き残りを母に持つ高島礼子

村を滅ぼした男の末裔と、村を滅ぼされた女の末裔を両親にもつ、三兄弟、健司、奏、悠真。

兄弟の内何故か奏だけ霊感を持ち、犬鳴村の生き残りである祖母とも仲がいい。

 

で、ぶっちゃけ、犬鳴村のたたりが及ぶのは真っ先に高嶋政伸だと思うのだが、彼は最後までまったく害がない。

それよりその血筋の半分は犬鳴村の末裔であるにも関わらず、何故か犠牲になるのは長男の健司だったりする。

 

そもそも健司とその彼女は、なんであんな危険な場所にわざわざ赴いたのか。

まあ、怖い物知らずの若者が心霊スポットに行くのはよくある話としても、誰も知らないはずの犬鳴トンネルの場所をどうして知ったのかも謎だ。

このトンネルは普段は閉鎖されているが、夜中の2時に公衆電話であの世と会話すると犬鳴村への道が開かれるということなんだろうか。

 

ちなみに、その彼女が妊娠している意味はよくわからない。

でも、この映画の中では携帯で話しながら、その話し相手が飛び降り自殺するというシチュエーションは一番インパクトはあった。言ってしまえば、監督的にはここですべてのネタが尽きてしまったかのようだ。

とにかく、本来呪われなければならない人間はまったく呪われること無く、ほぼ無関係と思われる、健司の彼女や、友達、しまいには健司自身が殺されると言うのはまったく訳がわからん。

この友人たちも公衆電話で溺れ死ぬという、なんかそんなたたりを受ける謂われも殆どないのに気の毒な死に方。

 

臨床心理士の奏が関わる、悪夢を見る子供の実の母親が、これまた犬鳴村の生き残りであることがわかるのだが、その設定も物語上たいして意味がない。奏が子供の実の母親の霊を観るというシチュエーションを描きたかっただけで、無理矢理犬鳴村の生き残りの子供という設定を関連付けただけに感じる。

 

奏は祖母の父親、奏からすると曾祖父にあたる霊を観る。

こいつが、一種の守護霊かと思いきや、いまいちこの霊も何をしたいのかわからない。

霊のくせに実体があるらしく、昔のフィルムを引っ張り出して、ひ孫に犬鳴村の悲劇を伝え、さらに、何を思ったか過去の犬鳴村に訪れたひ孫に、赤ん坊だった祖母を預けるという行動に出る。曾祖母は「赤ん坊を返して」と泣き叫ぶし、その過去の犬鳴村には何故か行方不明になっていた健司と悠真が捕まっていて、本来自分のひ孫であるこの3人を曾祖母は突如犬女みたいになって襲ってくる。

ひ孫に子供を託したなら、せめて曾祖父ももっとしっかり曾祖母を納得させるなり、ひ孫を守るなどの行動を起こせばいいのになんだか頼りない。

おまけに健司も謎の自己犠牲でその場に残って奏や悠真だけを逃がす。

あとに、健司はダムで水死体として発見され、その体には曾祖父や曾祖母の遺体がしがみついている。

いや、この曾祖父母は自分のひ孫に何してんのさーって感じ。

こんな味方とも思えないような曾祖父母と健司がその後も霊体となって墓の前に現れても、全然心穏やかにはなれない。

そして、何が功を奏したのかわからんけど、やはり犬女みたいになっていた高島礼子が病院から退院し、親子共々めでたしめでたしみたいな空気になっているのも訳がわからん。

 

さらに、とってつけたみたいに、奏が犬女みたいになるオチも、ストーリー上、何がなんだかなんで、ただポカーンとするしかない。

特に効果的でもない「だから何?」と言いたくなるようなタイムトラベル的ネタやら、たたりネタがまったくかみ合ってなくて、すべていきあたりばったりみたいな展開なんで、何が起こっても意味不明にしか見えてこない。

これは結局犬鳴村の者は犬にたたられているという話なのか、その割には祖母は割と普通に幸せそうに暮らしていたし、何故、ひ孫にそのたたりが降りかかるのか、これは誰にとっての恐怖なのか、最後までぴんとこないお話だった。