オリジナル版を観たら、リメイク版も再見したくなった。
しかし、感想は2011年に観た当時のレビューとほぼ一緒なんで、その時のものをコピペすることにする。
それにしても、今回オリジナルを観たあとにリメイクを鑑賞すると、よく出来たリメイクだなーと改めて感心する。
以下2011年のレビュー(一部加筆修正)。
ネタバレあり。
オリジナルは13人対53人のところ、リメイクは13人対200人と『300(スリーハンドレッド)』にも負けない多勢に無勢というはったりをかましている。
そんなわけで、クライマックスの長きにわたる殺陣シーンはもはや200人の大虐殺と見紛う有様。
のっけから内野聖陽の痛々しい切腹シーン。
そして明らかになる明石藩主松平斉韶の鬼畜っぷり。松平斉韶の鬼畜っぷりはオリジナル以上に惨い。
稲垣吾郎はSMAP×SMAPの『本当にあった恋の話』の再現ドラマで演じる最低男の役がはまっていたので、こういう役が意外にも合う。
よく事務所がこういう役を認めたなーと言う思う。
役所広司と対峙する場面では『笑いの大学』コンビを発揮。
この斉韶の犠牲になった尾張藩、松本幸四郎(松本白鸚)演じる牧野靭負の息子夫婦。谷村美月がちゃんとお歯黒、眉無しと当時の婚姻の習慣を再現しているあたりが素晴らしい。そしてこんな見た目でも犯してしまう斉韶もすごい。なんでもいいんかい?という感じ。 でも当時の美意識は案外このお歯黒眉なしが良かったという話も聞く。
この息子夫婦の無念を晴らすべく、橋の上で一歩も退くまいと仁王立ちする松本幸四郎の目のすごみ。息子夫婦を失った悲しみと憎しみと気迫が感じられて非常によかった。
(しかし息子夫婦の仇討ちとしてあそこで斉韶を撃ち殺してもよかったんじゃないかと言う気もする。そうなると尾張藩がお取りつぶしになるから出来なかったのか?)
また百姓一揆の首謀者の娘の哀れな末路。
血の涙をながしながら「みなごろし」と書く娘の凄まじさ。
(この当時の農民はひらがなを書けるんだ?)
娘が手足を失ったことを見せるためにわざわざ裸にしなくてもいいんじゃないかと思うシーンでもある。あれは別の意味で流辱だよ。
そして、先に切腹した内野聖陽演じる家老の家族を老若男女おかまいなしに弓矢で次々と射る斉韶。
情を解さない冷め切った狂気。
お膳立てはばっちり。
こんな鬼畜ならば天下に背いても、大儀を果たすべきと立ち上がる役所広司演じる島田新左衛門と十二人の刺客。
こんな狂った当主でも、侍たるもの当主にあくまで忠義を尽くすべきと考える市村正親演じる鬼頭半兵衛。
戦のない平和の世にあって、実践で人を殺した経験のない侍たち。
戦う大義名分は出来たとばかりに武者震いを覚える新左衛門。
ある意味水を得たかのように活気づく刺客たち。
男は何かと理由をつけて戦いたい生き物という言葉を思い出す。
そんな侍社会を皮肉るように存在する山の民の存在も効いている。
しかし、彼は何故最後まであんなに不死身だったのだろう。
完全に五郎ちゃんの短刀首に刺さってたよねー。
オリジナル同様霧の中から現れる明石藩、それを迎え撃つ十三人の刺客の構図は格好いい。
明石藩を一カ所に閉じ込め、役所広司と松方弘樹と古田新太が並んで立っているカットも格好良くて好きだな。
あと、最初に弓で攻撃するところも格好いい。
クライマックスの殺陣シーンはもはや蟻の戦いのように無機質なものに写る。
前半は少人数で罠と仕掛けを懲らして戦う面白さ、後半はもはや泥仕合。
もっと爆薬でがんがんやっていれば?とも思うが、当初の予定よりも敵が増えたことと、爆薬がそれほど準備出来なかったなどの事情があったのだろうか?
とにかく大変長いシーンではあるがなかなかの見応えはあった。
ただ、『斬り抜ける』を観てから「刀は3人までしか切れない(人間の脂がついて切れなくなってしまう)」という言葉を思い出すので、ああも景気よく一本の刀で人をずばずばと殺せないとは思う。途中、伊原剛志演じる剣豪がたくさんの刀を準備して戦う様はリアリティがあったが。
ただ、自分は最近スポーツチャンバラを体験してみたのだが、一試合でかなりヘロヘロになるので、こんな風にずっと打ち合いするのは無理だろうなーと思う。勿論、男性だから私よりは体力あるだろうし、侍だから普通の人よりは鍛えられてはいると思うけど、それでも、実際は数人と戦っただけでバテちゃうんじゃないかなーと思うね。
現実の戦いは道場のようなきれいごとのルールなどない。
その実践に長けた新左衛門と鬼頭半兵衛が勝敗を分ける。
そして、武士のとしてのプライドをかけて戦った市村正親の首をこともなげに蹴り飛ばす五郎ちゃんよ。
いやー、そのサイコパスっぷり、徹底してるなー。
役所広司がその首をはねてトイレに転がった時はすっきりしたね。いっそ首がトイレに落ちてもよかったかも。
生き残った伊勢谷友介と山田孝之。
最後に欲するは女か…。
ラストはどこか戦いのむなしさが残るオリジナルに比べて、ちょっと希望というか救いがあるのがリメイク。
作品の冒頭でわざわざこの物語は広島長崎で原爆が落とされる100年前のお話だとことわりがある。
何故そのことわりを入れたのか意図がよくわからない。
でもわずか100年で、日本は飛躍的近代化の波に飲まれたんだなーという気持ちになる。
何をやっても罰せられず、許される、そんな立場にあって、空しい虚無感に支配されるお飾りの当主、斉韶。
まさに江戸幕府末期症状。
現代人の裏に隠された狂気のようにも思えて恐ろしくも哀れ。
そしてシステムに完全に支配され、黒も白で通そうとする侍社会の息苦しさ。
それは今も変わらず、ただひたすら上の物には逆らわないYESマンサラリーマンの姿ではないだろうか。
時代劇低迷の時代にあってなかなか力の入った骨太なエンターテインメントに仕上がっている。
それにしても沢村一樹は年をとらないなー。
そして伊原剛志格好いいな。
役所さんは本当に安定した演技で素晴らしい。一番滑舌がよく台詞が聞き取りやすかった。
松方弘樹の存在感もさすが。
