ネタバレあり。
先に三池崇史監督のリメイク版を10年くらい前に観たのですが、オリジナル版は未見だったので何故か今頃になって観ることに。
実録タッチという事で、モノクロ画面といい、渋い役者陣といい、ドキュメンタリーのような趣きがあります。
13人対53騎という不利な戦いの中、いかに目的を達成するかというのが見所で、刺客側の島田新左衛門と、明石藩の鬼頭半兵衛の、好敵手としての攻防戦も見所です。
また、平和な時代、人を斬った事がない侍の殺陣と言うリアリズムもよく表現されていて、決して様式美として洗練されていない、まさにぎりぎりの命がけの戦いという雰囲気が出ていました。
正直出演している俳優さんを良く知らないので、13人の刺客ひとりひとりをあまり把握出来ず、印象的なのは剣豪の浪人平原平蔵と、新左衛門の甥の新六郎くらい。その点は俳優の顔を知っている分、リメイクの方が登場人物を把握しやすかったです。
リメイクでは稲垣吾郎が演じた松平左兵衛督斉韶、オリジナルで演じた菅貫太郎はその後もこういうバカ殿を振られることが多かったようで、そんなイメージでよかったのかしらという気もいたします。
リメイクにはなかった船着き場での暗殺未遂もなかなか緊張感があってよかったし、中山道落合宿での30分に及ぶ合戦のクライマックスはやっぱり見応え有り!
自分的には尾張藩家老・牧野靭負が参勤交代で移動する明石藩の通行を拒否し、毅然とバカ殿に対応する姿が良かったです。その後切腹という結末は悲しいですが。
もうひとつ、このバカ殿を新左衛門が討つ際に、ひたすら権威を傘に見下す言動を繰り返すバカ殿に対して冷静に対応する所もおっさん俳優の渋み爆発で格好よかったなー。
実際のところ、志村けんのバカ殿様ではないけど、殿様ってどこかバカっぽいイメージがつきまとうのは、徳川が、無能な殿でも、まわりの家臣がしっかり固めていればなんとかなるっていう体制を作ったから、実際こういうバカっぽい殿が多かったのかなーなんて思っちゃいますね。
モノクロ映画って、やっぱり霧が効果的で、刺客が待ちに待った明石藩の一行が馬のひずめを響かせながら霧の中から落合宿に現れるシーンは素晴らしかったです。
13人の刺客は黒装束に包まれ、明石藩とはっきり差別化されているのもわかりやすい。13人がずらりと並んで明石藩を待つ姿も格好よかったです。
藩の為とは言え、本来出来る男なのに、どうしようもないバカ殿に仕え、命を失う鬼頭半兵衛が哀れな気も致します。どうせ仕えるなら死んで本望と思える大義に仕えたいものですね。
その点、新左衛門は大義に仕えて果てたので、まだ本望だったのかもしれないけれど、もとより死ぬ覚悟のいる役目を引き受けるというのはやっぱり厳しいものだと思います。これって明らかに当時の幕府の体制による弊害ですもんね。尻ぬぐいさせられる方はたまったもんじゃありません。
ちなみに平原平蔵は剣豪で一番出来る男って感じでしたが、死に様がやけに悲惨な感じだったのは何故なんでしょう。何か作り手の意図があるような気がするので解説してもらいたいです。
とにかく「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」と言わんばかりに、武士は死ねて本望と思う場所を探しているものなのかもしれませんが、やっぱり死ぬということは、そんなカッコイイものではなく、どこか空しさを感じます。
