ジョン・ウィンダム原作『トリフィド時代』を1962年にイギリスで映画化。
幼い頃、よく昼間にテレビで放映されていて、軽くトラウマ映画だったりする。
今観ると全然ゆるい映画だが、当時は肉食植物であるトリフィドが妙な鳴き声をたてながらのろのろ近寄ってくる様が怖かった。
ゾンビもそうだが、基本じわじわくる感じが自分の怖さのツボだったりする。
ゾンビで思い出したが、ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にも影響を与えた1本だとか。
この映画に関しては原作とは異なる部分も多く、その後原作に忠実な形でBBCで1981年と2009年にドラマ化されている。
私も原作を読んだが、映画の方が単純娯楽なイメージ。ひたすらトリフィドという怪物に脅かされる人類という趣がある。
原作は、どちらかと言えば殆どの人間が盲目と化した世界で、トリフィドや疫病という脅威にさらされながら、どのように人間世界が変革していくかと言った部分も焦点になっていて、ジョゼ・サラマーゴの『白の闇』を原作とした『ブラインドネス』に近い印象。個人的には『ブラインドネス』よりは『トリフィド時代』の方が好きかなー。ちなみにジョゼ・サラマーゴは『トリフィド時代』からなんらかの影響は受けていないのかな?
ネタばれ
原作では最初から歩行する食用植物トリフィドが栽培されていると言う設定で、人間が失明してから、逃げ出したトリフィドが脅威になると言うもの。
映画では宇宙から来たトリフィドという植物が流星の影響で巨大になり、歩行し、人間を襲うようになるという設定になっている。その方がわかりやすい怪物感はあるね。
この物語はトリフィドもさることながら流星を観た人々が皆失明するという絶望感も怖さのひとつである。目の手術後で流星を見なかった主人公は失明を免れ、その後、絶望した医者の自殺や、列車の暴走や、飛行機の墜落などを経て、目の見える仲間と共に、トリフィドの脅威を逃れるというのがメインストーリー。
平行して、孤島の生物学者の夫婦もまたトリフィドの脅威にさらされる姿が描かれる。ただ、両者の話は最後まで交わらない。
自分が好きなシーンとしては、船乗りの主人公と少女が霧の中でトリフィドに襲われるシーン。車がスリップする中で徐々に近寄ってくるトリフィドの姿が霧から浮かび上がるシーンが怖くて良い。ちょっとカーペンターの『ザ・フォッグ』を思い出す。
そして、子供の頃、かなりトラウマとなって覚えているシーンが、スペインに移動した主人公たちが、たくさんのトリフィドに襲われる場面。電流を通した柵でトリフィドの侵入を防ぐのだが、柵の前にずらりと並ぶトリフィドの姿はとても恐ろしく、あとに夢で見るほどに怖かった。
そのトリフィドが音に反応するとわかり、アイスクリーム屋の車でトリフィドを引き連れて主人公が移動するシーンも印象的。その時のメロディは何年たっても忘れられない。
孤島の夫婦は、夫は酒に溺れ研究に対する意欲も減退という、なんとなく冷めた夫婦関係が、トリフィドの出現によって夫が次第に頼もしくなるという展開で、何かと言えば悲鳴ばかりあげる妻がうちの家族には大不評だったことが印象に残っている。確かにちょっと叫びすぎでうるさいと感じる。
ちなみに原作にはこの孤島の夫婦のエピソードはない。
まあ、メインのストーリーも原作とは随分異なるというか、かなりオリジナリティが強い。
結末も海水によってトリフィドが溶けて、めでたしめでたしという単純なものだが、子供心には「弱点は海水か!」となんだか盲点つかれたような感激があった。
原作ではイギリスを脱出した主人公たちがトリフィドを根絶した島に渡り、飛んでくるトリフィドの胞子を処分しながら、そこで生きて行くという結末。よって、トリフィドは結局世界からは撲滅されない。
そんなこんなで映画の単純明快さも私は決して嫌いではなく、なんだかんだでDVDも所持しているほど好きな作品だったりする。