三木卓原作小説を1980年野村芳太郎監督が映画化。
難病ものを扱った作品でありながら、テイストはオカルトホラー。
キャッチコピーが「おいで、おいで…幼ない娘… 彼女はその朝、悪魔と旅に出た」ですもんね。私も子供の頃はこの映画の広告をみるたびに『エクソシスト』ばりのホラー映画だと思ってましたよ。
まあ、悪魔憑きを難病のメタファーと考えるなら、この作品もエクソシストの一種と言えるのかもしれませんが。
ネタばれ
作品の演出は全体的におどろおどろしさがありますが、内容は難病にかかった家族の姿を丁寧に描いていると思います。ただ、なんとなく両親の描写が一風変わってるなーという印象はありますね。
娘が痙攣する姿にショックを受けるはわかるけど、母親がいきなり「産まなきゃよかった! あなたと結婚しなければよかった!」とか言い出すのはびっくりです。
娘の心配もさることながら、自分たちも破傷風に感染しているのではないかとやたら心配するあたりも、なんとなくわかるような、わからんような。
母親が精神的に追い詰められて、娘の病室に入るのを恐れるあたりはわかるような気もします。あんな緊張感に包まれて、悪化していく娘を見ているのは辛いですよね。
疲弊した父親が娘に向かって「これからはおまえだけを愛する。他に子供を持たない」と誓ったり、ついには破傷風の菌に向かって「娘が死んだらおまえたちも死ぬんだぞ!」語りかけてみたりはなかなかやばい感じでしたね。
重たい話しなんだけど、何故かあまりお涙ちょうだいな感じではありません。いろいろ大変そうな描写はあるのだけど、ウェット過ぎる感じではないんですよね。
病院食の食器が落ちたり、風でカーテンが開いたり、ちょっとした音、光りで発作を起こす娘の緊張感、血だらけの口、弓なりの痙攣と、ひたすら病気の恐ろしさが強調されます。
まさに出口の見えない絶望感ただよう展開の中で、突然少女は開放に向かい物語はめでたしめでたしと、この終息にあっけなさを感じますが、物事が解決するときはこんなもんなのかもしれませんね。
なにげに「チョコぱんだよー」の言い方が耳に残り、隙あらばものまねしたりもしますが、割と誰にも通じないネタです。
女医さんはきれいで、冷静に治療にあたっていて好感もてますが、気管支切除の件で嫌味を言う外科医は嫌な感じでした。結局気管支は切除しない訳ですが、わざわざこの描写を入れたのはなんだったんだろうって気がします。女性の医者だから男性の外科医の感じが悪いのか、そもそも外科医が感じ悪いのか、何か当時の医療の現状を現しているんでしょうかね。
