実は公開当時から私はこの作品がさほど面白いと思えないのですよ。

『リトルマーメイド』『美女と野獣』『アラジン』と手がけたアラン・メンケンのミュージカルらしい名曲ナンバーで綴られたディズニーアニメ大作の次の作品として期待もあったのですが、いざ見ると、ストーリーも曲もいまいちという印象しかありませんでした。

 

確かにエルトン・ジョンの主題歌『Circle of Life』にのせたオープニング映像は素晴らしいのですが、この映画のピークははっきり言ってこのオープニングがすべてで、後はそれほど心に残らない歌と、それほど胸に刺さらない世襲制のお話が続くだけ。
それでも、劇団四季の舞台ミュージカルの方も観に行ったりしてるのですが、あちらは動物の衣装がアートとしての面白さがあるから観られるし、あまり好きではない歌のナンバーも生舞台で観るとそれなりに楽しかったりします。

 

そんな訳で、今回は実写と見紛うようなフルCGという点だけ興味があって観に行った訳です。

まず、オープニングの完コピっぷりはびっくりでしたね。まるでアニメ版を実写風にするアプリでも使ったかのようにほぼ完全一致ですよ。まあ、ここは完全に完成されたシーンなのでいじりようがないという感じです。

 

アニメは88分ですが、今回は119分と長くなっているので、どのあたりが追加されたシーンなのかと思ったのですが、内容的にはほぼほぼアニメに反っています。少なくともこれまでの『美女と野獣』や『アラジン』の実写に比べるとオリジナル要素はそれほどないような。あったとしてもあまりに気にならないレベルというか、もともとこの作品に思い入れがないので気にしないだけなのかもしれません。

実際、いつナラが「私はシンバより強いのに何故血筋じゃないというだけで女王にはなれないの!」と高らかにSpeechlessを歌い出すんじゃないかとはらはらしたが、さすがにそれはなかったし。

 

超実写版なんて宣伝文句の通り、フルCGの出来はそれなりに見所ではあったのですが、この映画は致命的な部分で私にとっては台無し映画でした。それはネタばれの方で後述します。

 

 

ネタばれ

私は先に述べた通り『ライオン・キング』はあまり気に入らないアニメーションでしたが、『Circle of Life』のオープニングと、もうひとつスカーが歌う『Be Prepared』は気に入っています。
なので、この『Be Prepared』がフルCGでいかにブラッシュアップされるのか楽しみにしていたのに、なんとフルCG版ではこの歌はショートカットされていたのです。他の歌はフルバージョンなのに、何故に私が一番気に入っているこの曲だけショートカット!

ショックのあまり、後はもうどうでもいい気分になってしまったし、見終わった後は「酒だ!酒だ!酒もってこーい!」ってくらいやさぐれましたよ。

どんなに映像が実写のように蘇ったとしても、これだけでもうこの映画は私にとっていただけないものとなってしまいました。

 

監督は、アニメーションではこの歌はコミカルな描写があって、それが実写風の映像と噛み合わない的なことをインタビューで答えていましたが、しかし、ティモンやプンバァのようなコミカルなキャラクターは十分描いていたし、演出法でいくらでもうまいこと描けたんじゃないかって気がするんですが、本当に残念です。

 

あと、このフルCGがどのような方法で作られているのか謎ですが、ものすごくリアルに見える時の、なんとなく不自然に感じる部分が結構あって、「すごいけど、なんだか…」という戸惑いが残りますね。かすかに残る違和感みたいな感じ。なまじっか限りなく実写っぽい故に気になるというのかな。どこかで実写のまがい物を見せられてる感覚なんですよ。

 

お話に関しては、それを言っちゃおしめーよってことはあるんですが、お父さんがハイエナの住処を必要以上に秘密にしてシンバに「あそこへは行くな」と理由をちゃんと説明せずに逆に好奇心を煽るような言い方をする謎はありますね。

あと子供のシンバは無邪気ながらも「僕が大人になったらおじさんに命令するんだよ」みたいな挑発的なことを言うのも、スカーのイラ度をあげております。

何よりこの映画は肉食の生き物が草食動物と同じ食べ物を食べて生きていけるのか?という疑問が残りますねー。ライオンがすべての動物の王になるなんてあたりから既に無理が生じているのでそれをいっちゃーおしめーよーなのかもしれないけど、その無理に目をつぶって見続けるのがなかなかしんどい映画です。

 

あと、悪役がやりがちなんですが、主人公が死ぬ際に真相を話して逆にやられるパターンね。しかもシンバにだけこっそり真相を語ればいいのに、背後の母親にまで聞こえるような声で言うから、あっと言う間に王殺しがばれてしまうという、なんだかねーという感じの場面です。