なんでこうなった? と思わず首をひねりたくなるような出来。
『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』、『X-MEN: フューチャー&パスト』、『X-MEN: アポカリプス』に続く4作目にあたるそうだが、今回はブライアン・シンガーは一切関わっていないようで、先の3作と随分テイストが違う。
映画『X-MEN』シリーズ初のウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ配給作品と言うことも関係あるのだろうか。
これまでも脚本等で関わってきたサイモン・キンバーグ初監督らしいが、この人にいまいちこういうアクション映画の監督としての手腕がないのか、作風が問題なのか、とにかく全体に地味で、退屈で盛り上がらない。
同じ地味なトーンでも『ローガン』は面白かったので、地味なことが問題とは言いがたいのだが、スピンオフでもないのにこれまでのシリーズといきなり雰囲気違い過ぎる。終始前作と別映画を観てるような違和感と言うんですかね。
これがこれまでのシリーズの締めくくりとなると、なんとも言えない尻すぼみ感を覚える。
これなら同じジーンの暴走を描いた『X-MEN: ファイナル ディシジョン』の方が、評判悪かったけど、全然面白かったと思う。
ブライアン・シンガーは何故今回関わらなかったのだろうか。彼の中では先の3作で完結してたのかな。ダーク・フェニックスリベンジを果たすのかと思ったけど、むしろ『X-MEN: ファイナル ディシジョン』が不満だったから、リセットして新たなシリーズをはじめたのかと思ったけど、結局リベンジならずって感じ。
ネタばれ
まず映像的に画面が全体的に暗い。昼間のシーンも暗めだが、夜のシーンになると見辛いくらいだ。
アクションシーンは良いところもあるが、全体的に少ない印象で、途中すごく退屈。
宇宙飛行士を救う冒頭はちょっと盛り上がるし、クライマックスの電車のシーンも悪くないんだけど、これまですごくスケールの大きな戦いを観てきたのですごく規模が小さく感じる。演出的にも単調というかアクションの見せ方が平凡であまり楽しくない。
拘束されてたミュータントを不死身の宇宙人たちが襲ってきたことで人間が開放するくだりや、マグニートが宇宙人ごと電車をつぶして切り離すシーンあたりはよかったんだけどね。
キャラ立ちもいまいちで、私は個人的にサイクロップスが好きだけど、もともと優等生タイプのサイクロップス、アベンジャーズではキャプテンアメリカのような立ち位置というか、能力的にすごく強い訳でもないけど、古参だから何故かリーダーみたいな立ち位置キャラなんで、どうしてもジーンの彼氏として存在感を示せない。
よっぽど『X-MEN: ファイナル ディシジョン』でウルヴァリンが体の修復をしながらジーンに迫るシチュエーションの方が胸にきたぞ。
ましてや、演じる俳優タイ・シェリダンにいまいち魅力がなく、ぼうや感が半端ないので、なんかジーンに迫力負けしちゃってるし。本当にジーンとサイクロップスは深く愛し合ってるのか?って感じになっちゃう。それはジェームズ・マースデンとファムケ・ヤンセンの時も思ったけどね。でもジェームズ・マースデンの方がまだよかった。
ハンクも古株ってだけで能力的にはあんま頼りにならない。
ストームもただただ電撃攻撃繰り返すだけの人で、キャラ立ち弱いしね。
ジェニファー・ローレンスの無駄使い感もすごい。今回はよくこの映画に出演したねー。
ミュータントが社会的に受け入れられるよう組織を作ったプロフェッサーXとの対立も中途半端だし、X-Womenにすべきだって主張もその場限りで、別に作品全体のテーマと直結もしていない。
ただ、ジーンに殺されて、マグニートの復讐心と、ジーンの罪悪感を煽るだけの人物だった。
無駄使いと言えば、ジェームズ・マカヴォイとマイケル・ファスベンダーもなかなか無駄使い感あるけど、まだ彼らにはそれなりに見せ場があった。マイケル・ファスベンダーのアクションはところどころ格好よかったしね。でも、落ちぶれ感が半端ないっつーか、すっかりカリスマ性が失われたな。ミュータントの迫害が落ち着いたせいかいまいち何がしたいのかわからんキャラになっちゃったし。
ジェームズ・マカヴォイ演じるプロフェッサーXは役立たず感半端なかったけど、でも、ジーンを危険なミッションに追い込んで、彼女をダークフェニックスにした責任はまあ、あるかなーってところであるが、彼女が子供時代の超能力暴走で母親を殺し、父親から拒まれた事実を隠してたことはそんなに責められることか?って気がするよ。
ジーンの事件の後、プロフェッサーXはハンクに校長の立場を譲って引退したの? で、なんとなくマグニートと和解したっぽい感じになっちゃうてるけど、これからふたりはまるで一緒に暮らすかのような雰囲気でゲイっぽい感じがただよっていたな。
ジーンの事件で人間からの信頼を失ったミュータントはどうやって信頼を取り戻したのかって部分はまるっと語られないので、なんとなくめでたしめでたし感を出されてもすっきりしないよ。
一番残念なのは、クイックシルバーが早々に退場しちゃったこと。マグニートと親子関係エピソードはまるっと無視ですか。
そのあたりを今回は掘り下げてくるかと思ったんだけどね。
メンバーで一番魅力的な存在だったのに勿体ないねー。
でも、やっぱり能力的にはナイトクローラーと被ってる感半端なし。
そして肝心のサンサことソフィー・ターナーのダーク・フェニックス。なんだかとってもおばちゃんっぽく見えるのと、これが、将来ファムケ・ヤンセンになるとは全然思えぬお顔立ち。
謎のエネルギーに取り憑かれて彼女のダーク面が覚醒してるのか、ただ、謎のエネルギーに操られているだけなのか、いまいちよくわからない。彼女のダーク面が増長してるのが、そもそも何に起因しているのかもよくわからん。なんか事実を隠していたプロフェッサーXが悪いみたいになってるけど、もともと、ラジオの音くらいで切れちゃう子供の面が危険な訳で、どうやって自分の欲求を能力と直結させずに抑制するのかが課題なんじゃと思うのだが。
事実を隠していたことがジーンの暴走とどう関わるのかよくわからんし、プロフェッサーの嘘は誰が聞いてもジーンの為を思った嘘にしか思えないのに、「自分の為についた嘘だから許すわ」なんてなんで最初っからそこに気がつかないって感じだし、力はファミリーのためにみたいな自己犠牲で解決したっぽいけど、それまでの積み上げがよくわからんもんだから、いまいち心に響かないのね。母親を結果的に殺してしまったことや、そのあたりの葛藤も弱かった。
それにしても特にウルヴァリン好きって訳でもないけど、やっぱり彼が抜けた穴は大きい。
でも、前作のアポカリプスはそこまでダメージを覚えなかったんだがなー。
で、この後どうやって、ジーンが生きている時代に飛んだウルヴァリンの時間軸と合流出来るのか、謎ですわね。
それともウルヴァリンが飛んだ時代と、この物語の時間軸はもしかして別物、パラレルワールドなの? うーん、よくわからん。
そうそう敵役のジェシカ・チャステインは宇宙人らしい無機質感ははまっていたが、この宇宙人たちもいまいち何がしたいのかわからんかった。ジーンの力を手に入れて地球滅ぼして、自分たちが住む世界を構築したかったの?
でもそんだけ力があるんだったら、別に地球に固執しないで、どっか別の惑星で自分たちの世界を築けばいいじゃんって感じよね。
とにかくこれはシリーズ中ワーストに入る出来と言わざるを得ないわね。
