デ・パルマ監督による、ベトナム戦争で兵士強姦事件を描いた『カジュアリティーズ』のイラク戦争版。
2006年に実際に起こったマフムーディーヤ虐殺事件がモデルとなっている。
沖縄でもアメリカ軍による性犯罪は起こっているし、アメリカに限らず兵士の暴走を抑止することは困難なのだろうか。
今回はモキュメント方式で、映画学校を目指す若者のPOVや、YouTube、ニュース映像などを用いてよりリアリティのある映像となっている。それにしても昨今はYouTubeであがる実際の映像と、モキュメンタリーの境界が曖昧になってきているような。
でも、『カジュアリティーズ』を観た時の衝撃や後味の悪さには及ばず、割と普通に観られる感じ。
いや、最後の犠牲となった民間人の写真は痛ましいのだがそれは映画としての力ではないし、強姦の衝撃シーンも『カジュアリティーズ』を先に観てるからある種免疫があったのか、なんとか見るに堪えられる感じ。いや、嫌なシーンであることに変わりはないのだけど。
もしかしてモキュメンタリーという手法上、登場人物の心情にいまいち入りきれなかったのかなー。虐殺も映像としては描いていないので、その悲惨さが言葉でしか伝わってこないのもあるかもしれない。
(『カジュアリティーズ』は二度と観たくないようなトラウマ感があったので、そういう意味では今回は良くも悪くも薄口感を覚える)
メッセージはものすごくストレート。ストレート過ぎるくらいかな。
二度もこのテーマを映画でとりあげるということは、デ・パルマにとって、兵士による現地の人間への性犯罪というのは非常に許しがたい行為なのだな。
いや、勿論許しがたい行為であるけれど、そのことに執着するデ・パルマの深層心理には何があるのだろうとつい考えてしまった。
ネタばれ
曹長がふっとぶ衝撃シーンは案の定であった。めっちゃフラグ立ってたもんね。
最後に、友人の前で真実を打ち明ける兵士。彼の告白にまわりが拍手。そして写真を撮るという一連の流れがどうも違和感。あの拍手は戦争の暗部を語った兵士の勇気を讃えるものかもしれないが、実際あんな告白を聞いて拍手をする気になるだろうか。そして改めて彼の写真を撮ろうなどと思うのだろうか。事の重大さに思わず言葉を失って沈黙しちゃいそうだけど、そこはアメリカ人との感覚の違いなのかな。
せっかく真実を告発しようとしていた映画学校志望の兵士がよりにもよってさらわれて殺されてしまうというのは皮肉だし(首切りシーンが生々しい)、結局戦争というのは、一部の非道な行為により無関係な人間が巻き込まれて、憎しみが連鎖していくものだと感じる。
検問所で殺された民間人が2000人。その内敵は60人というのも空しさ倍増…。