以前、ユニバーサル・シネマ・コレクションのオーストラリア公演のDVDの感想を書いたのですが、今回は日生劇場の舞台の感想を書きたいと思います。
もはや映画ではないのですが、そこは大らかに受け止めていただければ。
ちなみにオーストラリア公演の感想はこちら。
https://ameblo.jp/anmajyo/entry-12127512335.html?frm=theme
さて、このオーストラリア公演でもいろいろつっこませていただきましたが、今回日本の生舞台を見ることで、さらなるツッコミが沸いてきたのでここに書き残したいと思います。
ちなみに私が観た舞台のキャストはこちら。
ファントム 石丸幹二
クリスティーヌ 濱田めぐみ
ラウル 田代万里生
ええ、キャスト的には申し分のない素晴らしいキャストです。
さて、ここよりネタバレになります。
まず、舞台のオープニングは石丸幹二のソロパートで浪々とクリスティーヌへの未練を歌いあげます。
続いてファントム一座登場。ここで乳母車を引く謎の熊が登場しますが、意味深に舞台を横切る割には深い意味はありません。
パリよりアメリカ、コニーアイランドに出稼ぎに訪れるクリスティーヌ。ラウルはすっかりクズ男。酒と賭博で借金まみれ。あの王子様みたいなラウルにこの10年何があったよ。
で、ラウルは酒に釣られて出資者に会いに出かけ、息子のグスタフはさっさと寝かしつけられ、クリスティーヌがひとりになったところを見計らって、ファントム登場。この登場の仕方が音楽もやたらに劇的だし、ポージングも大袈裟だし、なんか思わず吹き出してしまいそう。
さらに、このふたり、実は男女の関係があったと衝撃の事実が。
どうも、オペラ座の怪人のラストの後、クリスティーヌは新月の闇に紛れ、オペラ座の地下を訪れふたりはそういう関係になったらしんだけど、え、そうなん? ラウルを選び、指輪をファントムに帰して、永遠の別れみたいな劇的な別れをしておきながら、後から未練たっぷりにファントム訪れたん? じゃあ、あのファントムの圧倒的絶望はなんだったん? というか、あのクリスティーヌとの別れのすぐ後にアメリカ渡ったって設定だと思ったのに、その後関係を持ってからアメリカに?
ようやく思いが成就したっていうのに、クリスティーヌを連れて行かないでひとりでアメリカに渡るとかあり得ないでしょう。
ファントムは相変わらず自分の為に歌わなければ息子をさらうぞとかクリスティーヌを脅していて、それってオペラ座の怪人でラウルの首に縄をかけて「自分か彼かを選べ」って迫ってた時とやり方一緒というか、全然改心してなかったんかいというか、成長ないっていうか、クリスティーヌ、こんな奴のどこがいい?
で、ファントムはグスタフが自分の息子と早々に見抜き、クリスティーヌもあっさり認めるというおいおいな展開に。
というか、クリスティーヌはファントムの子供を身ごもっていると知りながらラウルと結婚したの? あんまりにもしたたかというか、不誠実過ぎる。なんだか一気にクリスティーヌへの好感度下がるぞ。
そしてふたりのそんな会話を謎の三角形の柱の中でこっそり盗み聞きしていたマダム・ジリーが現れるシーンはまたもや吹き出しそうに。
まあ、このジリーと娘のメグには多大なお世話になっておきながら、「俺の全ては息子に与える」とか自分勝手なことを歌いあげるからのちのち悲劇に陥るのですよ。駄目な男ですね。
二幕目、相変わらずのやさぐれっぷりのラウルの前に、不意に現れるファントム。もう、前作以上に神出鬼没過ぎるファントム。
クリスティーヌにはグスタフの実の父親であることを内緒にしてくれと言いながら、ラウルにはあっさりその事実を告げ、ライバルに勝ったかのようなどや顔。うーん、ラウルがそこをおとなしく受け入れたから良かったものの、下手したら逆上したラウルがグスタフやクリスティーヌを傷つけかねない展開ですぞ。
そして、楽屋でまたまたひとりになるクリスティーヌを見計らってここでも突然現れるファントム。タイミング見計らって身を潜めすぎっしょ。
ラブ・ネバー・ダイを歌いあげるクリスティーヌの前にものわかりよく身を引くラウル。クズに成り下がったけど、ここだけはいい奴だな。
でも、グスタフが行方不明になり、ファントムは証拠もないのにラウルを悪く言い過ぎ。
犯人はメグなんだけど、メグは本当に可哀想。ファントムを心から崇拝してるのにまったく振り向いてもらえず、しかも、仮にもかつてはオペラ座の舞台に立っていたのに「水着の美女」なんて非常に俗なショーで満足している。この曲もファントムの書いた曲だとすると、メグとクリスティーヌの扱いが歴然とし過ぎていて、本当にあんまりだなーという気がする。
メグはファントムの資金の為に身売りまでしているんだから、ファントムはあの親子をないがしろにし過ぎでしょう。
結果、ファントムはメグの説得に失敗し、最愛の人を失うというのは自業自得として、最後に来て立ち去ったはずのラウルが都合よくグスタフと共に現れるのも謎でしたね。ラウルはどこにいたんだ?
今回の日生劇場は真ん中でクリスティーヌが死んでいて、その遺体をかかえてラウルが悲しんでおり、端の方でグスタフがファントムの仮面を取り彼を受け入れるというシーンが展開するのだが、真ん中でクリスティーヌが目立っているものだから、本来見せるべきグスタフとファントムの場面がなんだか分離してみえる。オーストラリアのDVDを観る限りこのシーンは本来グスタフとファントムが一段高いところいるので、客席から注目すべき部分が明確なんですが、今回の舞台はラウル、クリスティーヌとグスタフ、ファントム、どっちに注目するのかちょっと混乱するのですよ。
勿論、先にオーストラリア版を観てるから、見せ場がグスタフ、ファントムにあるのは知っている訳ですが、それでも舞台の散漫とした印象は拭えず、DVDで観た時ほどの感動はなかったんですよね。なんでこういう演出にしたんでしょうね。
あと、私の好きな"The Beauty Underneath"の曲がオリジナルとは違うアレンジになっていたのも残念でした。
オリジナルの方が格好いいのに、どうしてこういうアレンジにしちゃったのかなー。
まあ、何度も言いますが、この舞台はストーリーはしょーもないという感じなんですが、歌、音楽、舞台美術、雰囲気などは非常に良いので、こうしたツッコミを加えつつも、嫌いになれないというか愛しい作品だなーとは思うのですけどね。
あと、石丸幹二、濱田めぐみの歌声は素晴らしかったですよ。