実話を盛って盛って派手に見せる『バーニング・オーシャン』みたいな映画だと思っていたら、これがまたとんでもなく地味だった。 
森林消防団の活動も地味だし、火事と火事の合間に挟まれる人間ドラマも地味。物語は淡々と進んで行く。何度睡魔に襲われたことか。 
挙げ句、予備知識がまったくなかったので、予想外の結末にずーん。ずーん。ずーん。 

それにしてもアメリカではしょっちゅうこんな大規模な山火事が起こるのね。。。

なんだか短期間で3本もジョシュ・ブローリン出演作が続いてるよ。

 

 

ネタばれ

予告の雰囲気から、多少数名が死亡するという展開はあっても、最後は爽快に終わるのだろうと思ったら、まさかほぼ部隊全滅とは。

元ネタとなる2013年のアリゾナ州のヤーネルヒルの山火事は911以降消防士の犠牲を最も伴った災害らしいが、私はこのニュースを知らなかったので、せまりくる炎を前に防火テントにくるまって炎をやり過ごそうとする彼らを観ても、この絶望的な状況で無事生還の感動が最後に待ってると信じていたので、まさかそのまま全員死亡してしまうとは思いもよらず、かなり衝撃を受けた。

 

隊長であるジョシュ・ブローリンにはちょいちょい死亡フラグがたってたし、マイルズ・テラーかジョシュ、どちらかが死亡する可能性は考えていたが、マイルズ・テラー以外が全滅とは衝撃的過ぎる。ちなみにマイルズ・テラーがどうしてもマーク・ザッカーバーグに見えて困った。

しかも、最初は楽観視されていた火災だけに、突然の急変というか、ベテランの消防士も逃げ場を失うほどに炎があんなに急に燃え広がるものかと恐ろしくもある。

 

あまりにもあっけなく部隊が全滅してしまった衝撃と、あまりにも悲しすぎる家族の嘆きが重すぎて、久しぶりに後味の悪い映画を観た気分。彼らが死ぬ間際に何を思ったか、どれほど苦しかったか、考えるだけで胸が痛い。

唯一ひとりだけ生き残りがいるとわかってかすかな希望にしがみつく家族と、それがマイルズ・テラーとわかった時の遺族の落胆とその空気のいたたまれさが、また非常にきつくて、そんな絶望の中でも必死にマイルズ・テラーを励ますジェニファー・コネリーがまた立派過ぎるくらい立派。

ジェニファー・コネリーがちょっと怖いかみさんを演じていて、でも、向き合うことから逃げずにまっすぐぶつかっていく夫婦関係に、しんどいけど、それで関係が前向きに進んでいくならすごいことだなーなんてぼんやり思ってたんだけど、生々しい感情のぶつけあいはやっぱりきつそう。

それでも、やっと子供を持とうという選択をした矢先にあの結末。しかも物語的には妻がそれでも妊娠していてなんて展開がありそうだけど、実話だからそれもなく、ただただ「ああ無情」という気持ちしかない。

遺族がこれを観たら辛くないのかな。

 

とにかく山火事と戦う爽快な男たちの物語なんてエンタメ的なものを期待して、とんでもない鉄槌をくらった気分というか、それまでの地味な展開がすべてふっとんで強烈なトラウマ映画にとって変わった。

エンドロールでは実際の隊員とキャストくりそつ合戦。いや、隊員がみな若く、そして愛する家族がいたとわかるこれらの映像がまた気持ちをずーんとさせる。

この世に神はいないものか?