羽海野チカの原作コミックを読んだ勢いで観ました。 

『ちはやふる』とは対照的に男性キャストははまってたんですが、女性キャストがぱっとしないというか、特に三姉妹はなんか違うなーという気が致します。でもあの少女漫画特有のふわっとした感じは実写ではなかなか難しいかなー。 
男性陣はやっぱり島田八段演じる佐々木蔵之介のはまりっぷりがよい。神木くんの桐山は漫画から抜け出してきたようだし、染谷将太の変身っぷりはすごい。でも二階堂とはちょっと違うイメージ。加瀬亮の冬司は漫画のイメージとは違うけど、原作がどこかファンタジーな存在だったのでこれはこれでリアルな名人感があってありな感じ。伊藤英明の後藤はぴったり。幸田を演じるトヨエツは格好よすぎ。あと奥野瑛太はインパクトある俳優で今後気になりそう。 

物語は原作をうまくはしょりながらまとめているなーと言う感じで、ただ、コミックでも主人公のおかれている状況は重たいものの羽海野チカのふわっとした作風とユーモアでそこまで暗くないのですが、映画はコミック以上にシリアスで重い雰囲気です。 
また、後編は原作にないオリジナルの展開になっていくのですが、いくつか首を傾げるシーンもあり、微妙な出来です。 
とはいえ将棋という映像で見せるには地味で難しい題材を俳優の演技とカメラワークでそれなりに緊迫感ある演出で盛り上げていたと思います(ちなみに私は一応将棋を指せるのですが、盤面の状況はうっすらわかる感じ。)。 


少なくとも同作者の『ハチミツとクローバー』の映画化よりは全然いい出来というか、前編だけ言えばすごく良い出来だと思います。

 

ネタばれ

桐山くんが三姉妹の父親のことで暴走した挙げ句、距離を置かれてしまう描写が痛かった。

原作では三姉妹の前であんな露骨な暴走はしないのだが、映画的にはそこで距離を置かれて主人公が苦悩するっぽい描写を入れて盛り上げたかったのだろうか。でも自分が守りたいと思っていた相手が支えだったと気づくのが、「いや、支えだからこそ守りたいと思ってたんとちゃう? 次女に対しては恩人とまで思ってたのに、今頃気づくの?」って言う疑問。

さらに主人公があれほど苦悩してるのに三姉妹が父親の事が解決しても彼が家に訪れるまで放置してたのは違和感あったな。

さらに、父親と縁を切ると決めてから遊園地に行くというのも違和感。あのシチュエーションで楽しく過ごせるものか? 最後にいい思い出と言ってたけど、幼い末っ子には返って残酷だったんじゃないかという気も(原作では末っ子と父親の接触を出来る限り避けてたしね)。

 

あと、幸田家の家庭崩壊の原因はやっぱり父親の将棋を中心とする価値観にあると思うし、諦めずに勝ち筋を見いだすという可能性を断ち切ったのも父親なんで、娘を諭す場面はどうしても「おまえが言うな!」って気分にはなるな。

弟も、桐山にあれだけコンプレックスを抱いているのに、彼からの獅子王戦のチケットを受け取ったりするだろうか?と甚だ疑問。

(しかし、幸田父は娘に香、息子に歩と、また随分地味な駒の名前をつけたものだ。私ならやっぱり飛車とか角にちなんで名前付けて欲しいな)

 

ラストの獅子王戦のロケはとてもきれいでよかった。