※感想はネタばれありです。

 

『シェイプ・オブ・ウォーター』同様アカデミー賞の発表の前日に観ました。

自分的にはアカデミー賞作品賞は絶対こっちと思うんですが、好みや評価はそれぞれです。

 

開口一番アメリカ南部の人間は気性が荒かばい! 

しかも、これ、現代のアメリカですよね。サム・ロックウェル演じるレイシストの警官の行動がひどすぎて、特に広告代理店の経営者への暴力は完全に検挙されるレベルなのに、なんの罪にも問われていないことに驚きですよ。さらに、加害者と被害者を同室の病室にするとか、完全にあり得ないレベル。南部の田舎ではこれが現状なんですかね? 

さらにこの被害者の寛容さも驚くレベルなら、レイシストの警官が自分に大やけどを負わせた女性を許しているあたりも、信じがたい。人間が奮う暴力と、裏腹に見せる寛容さに頭がぐるぐるする映画です。

 

フランシス・マクドーマンドの猛烈母ちゃんっぷりもすごい。レイプされ焼き殺された娘との最後の会話が「レイプされればいい!」だっただけに、ものすごい罪悪感が、警察への苛立ちや他罰的感情の源になっているというのもやや迷惑な感じというか、ただ同情されるべき被害者の母親というよりは、この母親もそれ以前にいっぱい問題を抱えている感が、作品への感情を複雑にしていて面白いです。

この母ちゃん、やることなすこと過激なんだけど、あまりに強いので、時々小気味よく感じます。

 

他者に傷つけられていると思っていた母親が、ティリオンもといピーター・ディンクレイジとの関係で自分を顧みる描写がよかったです。

 

ウディ・ハレルソンが途中で自殺するのも想定していなかったのでびっくりというか、てっきりこの映画はウディ・ハレルソンとフランシス・マクドーマンドを主軸に描くのだと思っていたので、ここからまったく先の見えない展開でした。

彼の奥さんがやけに若い印象でしたが、いくつの年齢差なんでしょう。主人公の元旦那も19歳の女性とつきあってるし。

 

サム・ロックウェルはとんでもない男だけど、ウディ・ハレルソンに恐らく父性を求めていたのか、彼の手紙によって目覚めるあたりの面白さや、とにかく最終的にどこに着地するのか読めない作品で、『シェイプ・オブ・ウォーター』とは対照的に、ストーリー展開が斬新です。

 

アカデミー賞におけるフランシス・マクドーマンドの主演女優賞もサム・ロックウェルの助演男優賞も納得だし、私はこの映画がとても気に入りました。 

 

不完全な人間が惑いながら進む先にかすかな希望を感じさせる非常に余韻の残るラストも素晴らしく、この作品は早くも今年ベスト1になりそうな予感がします。