正直言って、私は前作『フォースの覚醒』をあまり評価していないのですよ。
そういう意味ではこの作品も期待してなかったのですが、意外にも今作は『フォースの覚醒』より面白かったです。
なんていうか、『フォースの覚醒』はこれまでのSW(主に旧三部作)の焼き直し感が強かったのに対して、今作は、それらをすべて打ち壊す気概があって、それに関して賛否両論あるのはわかるんですが、私的にはその心意気は悪くないなーと思います。


ネタばれ

前作J・J・エイブラムス監督・脚本に継いでライアン・ジョンソンが監督・脚本をつとめた訳ですが、こういう展開を『フォースの覚醒』の時点で構想していたのかどうかというのは激しく謎というか、それくらい方向性が急激に変わった印象です。

多分に、これまでのスターウォーズに対する反逆的でもあり、またパロディ的でもあり、前作との整合性がとれていないという意味では違和感があります。

ただ、自分はスターウォーズの新作を作るなら、心機一転これくらい思い切ったことをして欲しいというのはあったので、むしろEP7からこの勢いで撮ってくれていたらなーという気分なんですよね。何しろルークとかソロとかレイアは一端まっさらにした状態から話しをはじめて欲しかったくらいなんで。

 

この作品ではあえて英雄を描かない、伝説とか、過去の栄光に頼らないという視点が面白い所です。
イケメン担当のダメロンくんは今回はその名の通り、本当に駄目ロンで、彼のヒロイズムはことごとく空振り状態。

ただのこじらせ反抗期にしか見えないカイロ・レンくんの悪役としての小物感は相変わらずで、スノークを失った時点でファーストオーダーの強敵感がないもんだから、EP9の戦いがまったく期待出来ない気分。

父親はためらいなく殺したレンでも母親を殺すことに若干のためらいがあるという意味では、彼とレイアの関係は今後も重要なのではと思うのだけど、キャリー・フィッシャーが故人となった今、どうやって処理するんだろうと心配です。『ローグ・ワン』のようなCG処理はしないと言ってるようですしね。

レイは特に誰の血筋という訳でもなかったということで、まあ、それはそれでもいいんだけど、なんかやっぱり主役としては葛藤も少なく、キャラが弱い。ただやたら正義感の強いフォースの才能溢れたお嬢さんって感じ。

レンもレイも、肝心のふたりの戦う動機がいまいち掴みにくいというか、レンがなんでダークサイドに落ちたのかも相変わらずよくわからないし(ファーストオーダーに洗脳されたってだけじゃ弱いし、伯父に殺されかけたからって言うのでもなんかぴんと来ないし)、両親に捨てられたレンがそれでもダークサイドに反発出来る力がなんなのかも描き方としてはちょっと薄く感じます。

フィンはあまり好きなキャラじゃなかったけど、今回はちょっと好感もてたような。あのアジア系とのお嬢さんとの絡みも悪くなかったです。彼女が自己犠牲で死んだ姉への思いがあったからこそ、フィンの特攻を止めるという流れは非常によかったです。

今回は、ベニチオ・デル・トロがやたらキャラ立ちしていて、下手すると映画全体を喰う勢いだったのだけど、これがまた中途半端な扱いで、このキャラが3作目で意味をなさないとなると、彼に纏わるエピソードは殆どまるっといらなかったような。

(普通に彼の肩にはタトゥーがあって、実は探していたコード破りだったという展開になるとか、最後は裏切ったとみせて実は…的な展開を期待したんですが、そういう予想はあえて外してきたのでしょうか? しかしその結果ただの無意味な人になっちゃってるのは残念ですね。)

全体にヒロイズム的行動を否定する話しなのだが、それでも、ローラ・ダーンのエピソードはちょっとぐっとくる。ダメロン視点で見ているから、消極的守りにしか入ってない人物のようにみせて、最後に一番勇敢な行動をみせるというのは胸に来る展開よね。ここは画的にもとてもきれいだったし。

そう、画的によい部分は結構あって、最後の赤い塩の描写なども非常に画的に素晴らしかったです。

 

英雄を否定しつつも、最後のルークとレンの対決は見所のひとつだし、最後にふたつの太陽をバックにルークが消え去るシーンも非常に美しかったです。

まあ、ルークのキャラもマーク・ハミルが違和感を覚えるのがわかるくらい、ちょっと違うような気はいたしますが、まあ、美しい最後と言ってよいでしょう。

とはいうものの今後霊体となってレンにつきまとうんでしょうかね。

なんだかんだで、結局、ルークが引きこもった理由、ジェダイが滅びなければならない理由がいまいちわからんかったんですが、まさかうっかり甥を殺しかけて…なんて理由だとしたらがっかりですね。そしてあの状況でもはやルークひとりが希望となり得るほどの存在にもなっていなかったようにも思います。ルークが死んだ理由もよくわからんというか、霊体で戦ったので力尽きたということでしょうか。霊体を使ったということは、いずれは本体で戦う為に身を守ったと解釈したのですが、それはなかったようです。まあ、あれは多分ふたつの太陽をバックに消え去るルークという絵面が撮りたかった為の設定でしょうね。

 

ヨーダの霊体が久しぶりに出てきて、雷まで起こしてましたけど、もうフォースなんでもありですね。

オビワンとか、肝心のダーズ・ベーダーの霊体はどうしちゃったんでしょう。むしろダーズ・ベーダーこそ孫の危機に現れてもいいんじゃないですかね。

ヨーダは失敗を弟子に伝えるべきだと言っていましたが、ルークは特にレイに伝えることなく自己完結しちゃったように見えるんですが、ep9で霊体となってレイを指導するつもりなんでしょうかね? でもレイは放っておいても勝手にどんどんフォースを駆使しちゃってるんで、師匠いらずっぽいですね。

 

今作は勧善懲悪ではなく、戦争の背後には武器を売ることで至福を肥やす存在があるところを示唆しておりますが、スターウォーズにしては少々生臭い所を描いてきたというか、急に社会派ドラマの様相を呈してまいりました。このあたりは私的にはちょっと違和感を感じるというか、金持ちカジノのシーンもスターウォーズの世界観からちょっと浮いているように思います。

 

あとはディスニーらしいあざといまでの可愛い動物キャラたち。ただかわいいというだけであんまり物語の中で意味をなしてないのが難点なような。

時々自分はスターウォーズを観ているのか、ハリーポッターを観てるのかわからなくなっちゃいますね。スノークなんてまんまヴォルデモートっぽい見た目ですし。まあ、彼の最後のまぬけっぷりときたら…。あのくだりは殆ど旧シリーズの皇帝みたいでしたが、弟子に裏切られて命を落とすパターンをまったく先人に学んでおりません。

旧作と違う点はレンがそこで改心する訳でもなく、ますますこじらせちゃったくらいですかね。あそこで急に改心されても「なんじゃ、そりゃ」となる所ではありましたが。

 

フォースをジェダイだけの特権にせず、血筋や、個人の英雄ではなく、各自が立ち上がるとする物語はちょっと面白いし、再び三作目でこれを引き継ぐJ・J・エイブラムスがどのように決着をつけるのか興味深いです。

ただ、どうせなら、ここまで方向転換しちゃったのだから、最後もライアン・ジョンソンが決着をつけたほうがいいんじゃないかなーと、また三作目で方向転換なんてことになると作品全体がぶれぶれになりそうで心配です。

いずれにせよ、ep9での決着如何によっては、この三部作が傑作か駄作かの結論が出ることでしょう。今のところかなり危うい状態を感じてきましたけどね。

ただ、私はSWの新3部作はep7の時点であくまでパラレルワールドの出来事だと思うようにしているので、何が起ころうともはや失望はないというか、私の中にあるep6の続きは永遠に私の中だけにあり続けることになるでしょう。