巴亮介の原作コミックは先に読んでいたのだけど、その時から終始雨、猟奇的連続殺人事件という意味で和製『セブン』みたいなイメージだったので、映画がそうなるのもしょうがない。
もっとも原作は編集側からの規制もあり、作者にとって不本意な結末であったようで、実際、私も読後「作者はこういう結末を想定してなかったんじゃ」と言う感じを受けたのだが、映画の方もそれを修正する訳でもなく、割と原作まんまに展開する。どうせなら原作でやれなかったことを映画でやるくらいの気概が欲しかったような。
殺人犯が「メトロポリタン美術館(ミュージアム)」を口ずさむあたりはなんだかちょっと懐かしかった。
個人的に小栗旬に魅力を感じないのと、妻夫木聡の漫画みたいな演技が鼻につくのだが、先に『怒り』を観たばかりなので、こういう役も演じるんだなーという意外性はあった。
日本のクリストファー・ウォーケンこと松重豊はすごくよかった。彼がいることで映画がぴりりと締まるというか、ちょい役だけどなんか主演ふたりを喰ってる勢いあったなー。
正直さほどサスペンスも盛り上がらずあまり面白い映画ではなかったが、白石晃士監督の『ミュージアム - 序章-』は観てみたいな。
ネタばれ
「仕事ばっかじゃなくて家族を大切にしなさいね」って言うメッセージばりばりなんだけど、言わばこのカエル殺人犯は彼らの絆に一役買ったのか? それとも猟奇殺人が負の連鎖を生むのか?
なんていうか、主人公が仕事ばかりで家族を顧みなかったことと、この殺人犯のアーティスト活動の一環としての殺人がいまいちリンクしてないように感じるのだけど。
犯人が殺人鬼になった背景が、過去に両親を猟奇的に殺されたトラウマみたいになってるけど、その背景が小栗旬に執拗に絡む理由と合致してないというか。
前半『SAW』みたいな趣向をこらした謎の猟奇連続殺人というサスペンスで見せるのだけど、後半、ひたすら小栗旬いたぶり回想モードに入ってからは途端に退屈って言うね。ミュージアムってタイトルなんだから、もう少しそこに焦点を当てた展開の方がよかったのでは?ってこれが原作通りっちゃー原作通りなんですけどね。
改めて映像として観るとそんな気分になりました。
それにしても黒沢清の映画は説明なさすぎだけど、この映画は登場人物がすごくご丁寧に説明し過ぎっていうね。さじ加減が難しいもんだね。
