『エルム街の悪夢』の1作目は物語の構成がきちんとしていて、面白い作品だと思うが、その後のシリーズは、フォーマットがパターン化し、ただ、ただ、いかに趣向を凝らした殺害シーンを見せるかだけに終始していて面白くない。

シリーズを重ねるにつれ残酷シーンだけがエスカレートする『SAW』がそうであるように(洒落を言っている訳ではない)、これはホラー映画シリーズ化の宿命とも言えるのかもしれない。

 

『スクリーム』ウェス・クレイヴン自身が殺人鬼に言わせているように、『エルム街の悪夢』シリーズで評価出来るのは彼が脚本、監督を担当した1作目だけだと思うが、1作目以来再びウェス・クレイヴンが脚本・監督を務めた7作目は、1作目には及ばないまでもなかなか異色な番外編として楽しめる。

というか、1作目以外見放していたシリーズなので今日まで7作目を観たことがなかったが、ウェス・クレイヴンが脚本・監督と知って今更ながら観てみようと言う気になった。

 

なにしろ1作目の主役であるナンシーを演じたヘザー・ランゲンカンプが自身の役で登場し、かつて『エルム街の悪夢』に出演し、その後結婚して息子がいるというメタ的なお話だ。

ちなみに実際のヘザー・ランゲンカンプは二度結婚し(夫はチェイズという名ではない)、娘が2人いるが息子はない。

 

フレディ演じたロバート・イングランドや、ナンシーの父親を演じたジョン・サクソンも本人役で登場し、なんとウェス・クレイヴン自身まで登場する。

 

もともとヘザー・ランゲンカンプが実際にストーカーによる電話に悩まされているという話しからヒントを得たようで、フィクションであるはずのフレディに実際の彼女が脅かされるという構成になっている。

 

これまでのシリーズよりずっと面白い設定だし、発想の面白さはやはり創始者という感じで伊達じゃない。何故日本未公開なのだろうと首をひねるが、強いて言うなら物語に重きを置く分、地味に感じられるかもしれない。楽屋ネタと言うのもマニアックかも。

1作目の印象的なシーンを焼き直した感もあり、それはあえて狙ったのだろうが、セルフリメイクっぽい感じ。

 

物語の後半においては従来通りのフォーマットの域を出ておらず、やはり1作目の構成力に比べるとアイディはいいが全体としては弱い。

せっかくロバート・イングランドが本人役で出ているのだから、虚構のフレディと彼が対決するくらいの展開を期待したのだが、そのあたりは肩すかし感があった。

CGもところどころちゃちい。

それでも他のシリーズよりは観る価値があった。

 

とりあえず、やはりフレディの生みの親であるウェス・クレイヴンとしては、彼自身でフレディに落とし前をつけたかったのね、という何故か親目線みたいな気分になる。