※ネタバレ気味です。
本来ワタクシ、スラッシャームービーが好きじゃないんですよ。
若者が殺人鬼にひたすら殺されるだけのマンネリズムに面白みを覚えません。
おまけにこの映画、予告の段階からもなんだか生理的に受け付けない感じが漂っていて、長らく観なかったのですが、勇気を出して観てみたら、あら、これ、好き嫌いを凌駕した何かに圧倒されましたね。
リメイクもされましたが、ただ、筋立てをコピーしたり、レザーフェイスを出せばこの何かが表現出来るという類ではない、ある種の奇跡とでも言いましょうか。
決して好きな映画ではないけれど、でもこの名状しがたいパワーは否定出来ないというか、なんかわからんけどすごいものを観たって気分になります。
それにこれだけ猟奇的な雰囲気を漂わせていながら、意外にスプラッターシーンは殆どないという上品な作りも好感度があがります。スプラッターシーンがないのにこれだけ不快感を盛り上げるというのはすごいことですね。
伊達にその芸術性を認められニューヨーク近代美術館にマスターフィルムが永久保存されている作品ではありません。
さてさて、今回はコメンタリー付きで観たのですが、ナイフの血糊の仕込みが上手くいかなかったから、アドリブで実際にマリリン・バーンズの指を切ったとか、マリリンの膝の怪我は本物だったとか、箒で本気で殴られて頬の傷も本物だったとか、体中にトゲが刺さって撮影後に抜いていたとか、その辺にあった本当に汚くて臭いぞうきんを口に詰められたとか、演じている俳優は本当にマリリンを殺したいと思ってたとか、なんか画面から伝わる狂気のリアリズムはこういうところから生まれてたんだなーっとしみじみ思いました。
というかマリリンの迫真の演技はこうした虐待のような撮影状況下で生まれたのですね。あ、でも、マリリン曰くまわりは非常に自分を大事にしてくれていたらしいですが。
そして、あのミイラ化したじいさん、14歳の少年だったんですね。
老人の俳優をあえて起用しなかったのは何故なんでしょうか。
しかし、コメンタリーで撮影秘話を知るのは面白いけど、あの時、こうやって撮影してたのかーと思うと作品にのめりこめなくなるのが難ですね。
まさに画面で起こっていることが現実のことのような錯覚を覚える部分が損なわれちゃうというか。
特にマリリンが足が遅いから、追いつかないように調整していたレザーフェイス役の人のコメントは知りたくなかったような。。。それを知って観てしまうとせっかくの迫力が冷めてしまような気が致します。
それでも何度観てもレザーフェイスの朝日のダンスは美しいです(実際は夕陽だったらしいですが)。
あれこそが奇跡のシーンです。
ところで、私、この映画数回観てますが、サリーとフランクリンって兄弟だったんだなーと今更なことを知った次第です。何故あのメンツの中にフランクリンがいるのか謎でしたが、納得しました。本当に今更何言ってるのでございます。