夏になると観たくなる映画として『ジョーズ』とこの『ザ・フォッグ』がある。

個人的にはカーペンター監督の最高傑作と思っているのだが、同感者は皆無に等しい。

 

とにかく個人的ツボにくるのだからしょうがない。


怪談を子供たちに語って聞かせる冒頭からツボだし、語り終わった老人の画面が上にロールして闇から海岸、そしてThe Fogとタイトルが出る流れなどしびれる。

 

次々と起こる港町の怪現象。だが、電話が急に鳴り出したり、テレビが勝手についたり、車のクラクションが鳴り響く怪現象よりも、スーパーの店員が棚にある飲み物をこっそり飲んで棚に戻しているシーンの方が震撼とする。 
ねえ、アメリカの店員ってそういうことをするのがポピュラーなんですかね? 

なんかよくある風景って感じでナチュラルに撮ってるんでホント怖いです。もしアメリカのお店で飲み物を買う事があったら、蓋のゆるみがないか、量が減ってないかしっかりチェックですよ。 

 

この映画には大好きなシーンがたくさんありますが、特筆すべきはとにかく霧の美しさ。そして霧の中に浮かぶ亡霊が怖くて格好いい。祭壇に現れる亡霊の立ち姿なんて亡霊のフォーマットか!ってくらい完璧。赤く光る目もたまらない。

絡みつく海草とか、歩くとびちゃびちゃと音がするあたりも嫌な感じで最高。

 

漁業船が遭遇する幽霊船もいいし、カップルの元に訪れる亡霊のシーンも怖くていいし、子供が拾った難破船の板から聞こえる不気味な声とか、カップルが子供を救出して車がスリップするシーンとかもすごくエキサイトするし、教会とDJの危機を並列で描くあたりもとてもスリリング。

あー、もう何から何まで好き過ぎる。

 

でも、そんな大好きな作品ですが、いくつかツッコミたいこともあるんです。

 

ザ・フォッグに対するツッコミ【ネタばれ】

 

●なんで幽霊として戻ってくるのに100年の月日を有したのか? 霊界の事情?

 

●自分たちを裏切った6人の代わりに、町の住人を6人無差別に殺すという大雑把さ。

(しかも物語の前半でその半分が片付いている。もしあの船に6人乗っていたら話しは終わっていたのにな)

どうせ復讐するなら、律儀に自分たちを裏切った人数と同じじゃなくても、裏切りの土台に建てられた町の住人全部を殺すくらいの気概が欲しいですよね~。

 

●自分が3人目の犠牲者であることを律儀に伝えるリビングデッド。

 

●主役格のカップルはいろいろ不可解な目にあってるので、霧の中に亡霊がいるという事実を受け入れられるとしても、市長と秘書はやけにあっさりそれを受け入れたなーっと。

 

●というか、他の町の人たちは大丈夫だったのか? 町の生誕100周年記念祭に出席していた人たちとかどうなった?

 

●すぐに息子を助けられない状況にあったとはいえ、息子の生死よりも仕事を優先する謎の使命感を持つDJ。

 

●全員が教会に逃げ込んだのち、カップルの男の方が神父の酒瓶を奪い取って投げつけるのは何故。いや、切迫した状況で酒なんか飲んでる場合じゃないって気持ちからでしょうが、別に投げつけて割らなくても…。後片付けが…。とつい考える。

 

●聖堂に置き忘れた日記。意味深なシーンなので、この日記を取りに行くことで何かひと波乱あるのかと思ったら割とあっさり取りに行けた。せめてここで窓ガラスを割る亡霊と遭遇するとかなんらかの危機があって欲しい。

 

●祖父の罪滅ぼしをしようとする涙ぐましい神父。もともと酒浸りっぽいし、自殺願望でもあったのか?

 

●黄金を受け取って、引き下がったかに見えた亡霊。でもやっぱり戻ってきて6人目を殺す彼らの行動はなんなん? 黄金受け取った後、「いっけねー、1人殺し忘れた!」って感じで戻ってきたんですかね? 黄金取り戻して浮かれ過ぎて殺し忘れるなんて亡霊さんもうっかりさんです。

 

なんてツッコミの数々は野暮ってもんですよ、あーた。

いやいや、野暮を承知でちょっとツッコミたくなったんです。

そもそも怪談なんで、不条理があっても良い訳です。何故100年後とか、何故無差別に6人とか、理路整然としていないところが怖い訳ですから。

それに、こういうツッコミがあっても、この作品が大好きなことに変わりはないですからね。