この映画はずっと男女の共通点というところに執着しているのが興味深かった。
まあ、確かに恋愛にしても友情にしてもある種の共通点に惹かれるものだが、この映画は本当に極端。
婚活に失敗すると動物に変身させられるという設定が異色で、でも、どうやって人間を動物に変身させるのかは謎のまま。ポイントはそこじゃないってか?
人間を動物に変身させるほどの科学力が進んでいる未来って訳でもないので、このあたりは殆ど寓話的。
コリン・ファレルは好きな俳優じゃないけど、このくたびれた親父感は非常に上手でコリン・ファレルってことを忘れてしまう感じだった。ジョン・C・ライリー、ベン・ウィショーと出演している俳優もいいけど、ちょっと想像していた映画とは違った。
すごーくヨーロッパっぽい映画と思ったら、ギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリスの共同製作とがっつりヨーロッパ映画だ。
ものすごく面白いかと言われると微妙だが、独特の空気が後を引く。
なんていうか、いまいち何を考えているのかわかりにくい主人公の淡々とした様がまた不思議な雰囲気を醸し出している。
ネタばれ
鼻血を出す女性に合わせて自分も鼻血を出すとか、心がない残酷な女性に合わせて残酷になるとか(なんで主人公はわざわざこの女性を選んだ?)、近視という共通点に惹かれたり、しまいには盲目の相手にあわせて自分の目さえもつぶそうとする。
最後は主人公が本当に目をつぶしたかどうかはわからないまま。でも、ポスターを見ても、彼が抱きしめているのは実態のない相手であり、あたかも自分を抱きしめているようにもみえる。
同じ共通点だけを追求するというのは、所詮は自己愛に過ぎないってことを現しているのかな?
ラストに聞こえる波の音は彼がロブスターになったことを示唆しているのかな?
ホテルでは恋愛出来ないと動物に変えられてしまうが、森のコミュニティは逆に恋愛は御法度だったりと世界観も極端。
恋愛した者に加えられる罰は想像するだけできつい。
どこに言っても誰かが決めたルールの中を生きるしかないディストピア。その閉塞感がずっと映画全体に漂っていて、だから登場人物はみんなどっか死んだようで、みていてなかなかしんどいものあります。