さてさて、またまたうさんくさい夫婦エド&ロレイン・ウォーレンの事件簿ですよ。

例によって実話であると謳っておりますが、「この物語は実際にあった事件にフィクションと誇張を加えたものです」って言う断り書きをいれるべきです。

 

不思議なことに「これは実話です」と謳っている割にはまったくリアリティを感じない展開。

まあ、後半なんて全部フィクションなんですけど、演出上もっとドキュメントっぽく作ればいいのになーと思います。

オカルト映画ブームだった70年代にこういう映画は腐るほど作られたので、なんていうか既視感というか、懐かしい感じさえ致します。

リールテープとか調査側のアイテムもレトロ感満載です。

ウォーレン夫婦の活躍っぷりもなんだか昔流行った黒田みのるのオカルト漫画を思い出す感じで、終始この夫婦のプロパガンダ映画を観ているような気分になります。

そしてやたら見せつける美しい夫婦愛も気恥ずかしい気分です。

ところで実際のエンフィールド事件を調べると、調査にこの夫婦が参加し、あんな大活躍を見せたという記述が見当たらないのですが、本当に関わっていたんでしょうか。関わっていたとしても映画のように主体ではなかったと思われます。

 

ちなみに冒頭でアミティヴィル事件も出てきますが、これもラッツ一家の経済面のトラブルの為にでっちあげたとされているお話なので、なんだかなーという感じはいたします。

(のちにこのラッツ一家の息子が「あれは真実だった」と主張しているようですが、親の汚名返上の為か、二匹目のドジョウを狙ってのことかは不明。いずれにせよ、その後この家に住んだ人にまったく超常現象が起こらなかったことが何よりの証明という気もしなくもなく)

この家にまつわる話で最も怖いのは、ロナルド・デフェオ・ジュニアによる一家殺害事件。映画では彼が麻薬常習者ということには触れていないのですが、アミティヴィル事件ではどんな超常現象が起ころうとも結果的にひとりも死者が出ていないことに対して、この事件では一晩で一家皆殺しとは、怖いのは悪霊ではなく麻薬、そして狂った人間って話ですよ。

 

それはさておきエンフィールド事件は1977年イギリスで起こった信憑性の高いポルターガイスト現象と言われているようですが、映画におけるその筋書きはまんま『エクソシスト』です。

発端がウィージャ盤。夢遊病。ポルターガイスト現象。揺れるベッド。移動する家具。少女に憑依する男の声。録音したリールテープからわかる事実。そして受け継がれるメダルならぬ十字架。もうプロットがほぼエクソシストなんですよね。

そういえば、『エクソシスト』公開直後に起こった『エミリー・ローズ』のモデルとなったアンネエリーゼ・ミシェルの事件も映画の影響があったのではないかという話があるようで、エンフィールド事件もその余波という気がしなくもなく。

このエンフィールド事件に関しては確かに多くのポルターガイスト現象が記録されているようですが、実際の少女が空中浮遊しているとされる写真も、映画でも指摘されていた通りベッドからジャンプしているようにしか見えないし、いくつかの現象は少女による作為的なものであることが発覚し、それに対して少女の言い分が「実際の現象と偽物の現象の見分けがつくかどうか試した」と言う、苦しい言い訳のように感じる訳です。

 

それにしても、エクソシズムには悪魔の名前がわかればその力を無力化出来るというルールがあるようですが、これってケルトっぽいというか、日本でいえば『大工と鬼六』かって感じで、いきなりファンタジックな展開になるんですよね。こういうおとぎ話なところもいまいちリアリティとのかみ合わせが悪い要因。

最後は高い所から落ちて下にたまたまあった何かに刺さって死ぬというB級映画そのまんまのわかりやすいフラグがたって、ちょっと笑ってしまいました。

どうせ、何が起ころうとも、ウォーレン夫婦をはじめ誰も死なないってことはわかっているので、展開がぬるいというか退屈というか、恐怖演出も、相変わらず悪霊がはっきり姿を見せちゃうので怖さもなく、派手なポルターガイストが起こっている最中でさえ、終始うとうとしちゃう映画でした。