「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」で有名なジャン=ポール・ベルモンドが神父に扮すると言う映画。日本では未公開らしい。
ベルギーの女流作家ベアトリクス・ベックの自伝的小説が原作らしいが、なるほど作品の詳細な描写というのは実際の経験に裏打ちされたものなのだろう。

見所はシングルマザーで無神論者である主人公と、若く敬虔なモラン神父の宗教についての議論、対話のシーンである。このあたりのやりとりはなかなか面白かった。
それにしても、いくら神父とはいえ、個人的に司祭館の部屋に招かれたり、自宅に訪ねられたら、ちょっと「何か下心ある?」と疑ってしまいそうなシチュエーション。いや、あくまで神父の愛はアガペーに基づくものなのだろうが、そのふるまいは無意識的にも誘惑的だ。
そりゃー、主人公が思わず惚れてしまうのも無理はない。
というより、こりゃー鼻先ににんじんをぶらさげられているようなもんではないか。

神父の感情はよくわからないが、異性としてではないとしても、主人公になんらかの魅力は覚えていたのだろうし、そのために彼もまた懺悔を繰り返していたのかも知れない。そしてあくまで彼は彼の信仰を貫く道を選んだのだろう。

あくまで神父は神父として姦淫の罪を犯すことなく我が道を行く選択をし、彼女もまたそうした彼の姿にアガペーとしての愛が芽生えるあたりは、本当の意味での信仰の目覚めと言えるのかもしれない。
それにしても崇高な信念のもとに別れるというのは、切なくも美しいお話ではあるが、宗教とは、人間の欲望とひたすら相反するものなのだなー。