ネタばれ気味です。

なんとなくSF、ファンタジーとしているが、ジャンルはわからない。
なんらかの理由で水、食料が不足しているヨーロッパが舞台で、そこで生き抜く人々の姿を描くのがメイン。

のっけからハネケらしいというか、「え、そのタイミング?」というタイミングで父親が殺される。

全体的にちょっとイライラするトーンで、何かと言えばすぐに行方不明になる弟や(その弟を必死に探す母娘というシーンが二度もある)、泣き叫んだり、言い争ったりするシーンが多いので見ていて疲れる。
特にハネケはそういうシーンをくどいほど描写するので余計しんどい。

しかし、ポスターのシーンは印象的で、極限状態に陥った人々の癒やしとも希望とも思える美しいシーン。
とにかく少年を抱きかかえて慰める男の台詞が優しい。とても優しい。

最後の車窓の風景は、待ちに待った列車に乗れた人々の視点なのか、これから彼らの元へと向かう列車の視点なのかはわからないが、でも、絶望の中に見える希望の風景だ。

この物語は、旧約聖書のアバラハムが息子のイサクを神に差し出し、神がその気持ちを受け入れ、代わりの生け贄の山羊を用意する「アドナイ・エレ」のエピソードを思い出す。少年の行為は神にその命をゆだねるものであり、男の言葉はその心だけで十分だと慰め、最後の電車は神の備えを現しているように感じられる。