なりものいりで『パージ』『パージ:アナーキー』と立て続けに公開されたが、何かこう「年に一度12時間犯罪がすべて合法となる制度」というワンアイディアだけで終わりそうな嫌な予感がひしひしとする。
偶然ながら『プリデスティネーション 』に続き主演はイーサン・ホーク。
イーサン・ホークが主演する映画は完全にハズレとも言えないが大絶賛に至らないことが多い。
まあユアン・マクレガー主演の映画よりはましというか、『プリデスティネーション 』のようにアタリがあることもある。
しかも、監督に気に入られることが多いようで、同じ監督によく起用されている。
今回も『アサルト13 要塞警察』のジェームズ・デモナコ監督作品で再び主演をはっている。
立てこもりという部分では『アサルト13 要塞警察』を彷彿とさせる。
無法地帯となった町での立てこもりという意味では、『真夜中の殺人ゲーム』の方が近いかもしれない。かたや警察のスト、かたや合法という設定の違いはあれど、やってることはそう変わらない。一般人がひとりの人間をかくまったことで巻き込まれるトラブルという点も同じだ。
以下ネタばれ
その為か、多分に既視感溢れる作品となっている。
おまけになんだか非常に苛つく作品だ。
最初に黒人を助けた少年は本来なら人道的で博愛精神のある褒むべき存在かもしれない。しかしその為に家族を危険にさらし、父親が死ぬ羽目になっている。本来ならこの少年の行為を応援し、非人道的な制度の対極として心動かされるべきものであるはずなのに、何故かイライラしてしまうのはどうしたことか。
そもそもこの黒人が本当に助けを求めているのか、パージをしようと演技しているのかもわからない状態で、家族に相談もなく助けるという自分勝手な行動もイライラする。
また、娘は娘で彼氏が死に動揺していたのかもしれないが、いたずらに家の中をうろうろうろうろして、これまた大迷惑な存在。弟の秘密の隠れ場所に行くくらいなら、母親と弟がいる部屋に一緒にいればいいのに、なんでわざわざ別行動してるんだろう?
で、唐突に家族みんな人道主義に目覚めちゃって、挙げ句、自分たちに身の危険が及んできゃーきゃーきゃーきゃーと、父親を批難しておきながら、いざとなると父親の助けを当てにする困ったちゃんぷり。
まるで泳げない人間が溺れている人間を助けようとして一緒に溺れる間抜けっぷりだ。いや、人を助けようとする気持は大事だが、ただ安易な人道主義に流されているように見えるのはいただけない。
自分が助かる為に家族を殺そうとした人間をあえて助けると言うのなら、そこにもうちょっと説得力ある動機をみせて欲しいし、黒人をかばって戦うならばもっと知恵をつかった攻防戦を見せて欲しいのに、なんだか闇雲に家の中をうろうるするだけの行き当たりばったりっぷりで映画としても面白みがない。
セキュリティが脆弱過ぎるのも問題だし、なんちゅーか、もっとシェルターみたいなしっかりした一室に逃げ込めるようにでもしないととてもじゃないが安心出来ない。
人間の隠された悪意が合法化されることによって露見するというあたりは良かったのだが、見所はそこだけかな。
こんな一夜を過ごしたらその後の人間関係にも絶対支障出ちゃうよね。