なにが怖いって、あーた、ビジュアル的に既に気味の悪い人形をコレクションしようという人形コレクターの心理ですよ。
アナベルって人形、まったく可愛い要素が感じられませんもんね。
でも外国人の感性ですから、これはこれでありなんでしょうか。
って、実は実在するアナベル人形はなんと「ラガディ・アン」だったんですね。なるほど、「ラガディ・アン」では一気に怖さ半減です。
『死霊館』に登場した超常現象研究家のエド&ロレイン・ウォーレン夫妻のオカルト博物館に今も保管されているそうですが、まあこの夫妻の信憑性もよくわからんところで、さらにこの映画もかなりフィクション要素が強そうです。
まあ、それはさておき、本来人形って題材はそれだけで怖いものです。
ただ、元来派手好きの海外映画では日本のような心理的怖さがあまり上手に描けないので、この映画もあまり期待してなかったんですが、意外に悪くなかったんですよ。
まず冒頭の隣人が殺されるシーンは、窓越しで唐突に行われるあたり、リアリティがあって演出的に良かったです。
ただ、隣にで悲鳴が聞こえたからって無防備に隣を訪問する旦那の行動は不可解でしたね。もし危険な強盗と鉢合わせにでもなったらどうするつもりだったんでしょうか。そして、妻に「救急車を呼べ!」と叫んだあと、彼はどこに向かって走って行ったんですか?
妻は妻で戸締まりにナーヴァスになっていた割にはこのシチュエーションで家に鍵をかけずに入るんですね。そもそも家を開けっ放しで外に出てたし、身近に危険人物がいるかもしれない状況で実に無防備過ぎるんですよ。
なんてフラストレーションを感じるものの、マンソン・ファミリーによるシャロン・テート殺人事件と言うバックグラウンドもあって、日常の落とし穴的怖さがありましたね。
って、ここは人形関係ないシーンでした。
もうひとつ、この映画で怖いシーンが、地下の物置で悪霊と遭遇して逃げ出す主人公が、エレベーターで脱出しようとするシーンがかなり怖かったです。この映画で最も怖いシーンと言ってもいいでしょう。
その昔読んだ小池真理子の『墓地を見おろす家』でもエレベーターが勝手に地下に行ってしまう場面があったんですが、それを思い出しましたね。
こういうシチュエーションは私的にはかなりツボです。
あと、人形がそこそこ薄気味悪くて良かったです。『チャイルドプレイ』のチャッキーみたいに元気に襲ってくると興ざめなんですが、人形の怖さって本来その中にこめられて情念にあると思うんで、むしろ「ちょっとおかしい」というレベルでOKなんですよ。
映画的には地味になっちゃいますけどね。
人形に取り憑いたアナベルの霊が現れるシーンなんかはちょっとJホラーっぽい雰囲気もあって悪くなかったです。
ただ悪魔がその姿を見せちゃうとちょっと怖さ半減ですね。
あと、あの母親はどんなに恐ろしい目にあっても、一過性で終わるのが不思議でした。私ならもっと大騒ぎしますよ。しかもあれだけの事件の後で悪霊の姿を目の当たりにしたら、確実に自分の正気を疑いますが、あんなに自信満々に自分がまともだと主張出来るのも不思議です。
だもんで最初っからノイローゼの人の妄想を観ているような気分なんですよね。
全体的に「自己犠牲こそが尊い」という、とても某宗教の教義っぽい感じで、「ふーん」って気分にはなるですが、いくつかツボにくるシーンもあってまずまずという感じであります。
