これも町山智浩の『トラウマ映画館』で紹介されていた映画で、蔦屋発掘良品にあったので借りてみた。

いやー、これは非常に怖い映画だった。
富裕層が突然に落とし穴に落ちたかのように理不尽な攻撃を受けるという意味では『ファニーゲーム』を思い出す。
しかし、後味の悪さはある意味『ファニーゲーム』以上かもしれない。
先の『裸のジャングル』も怖いと言えば怖い映画だが、後味は悪くない。対してこれは文字通りトラウマになりそうな映画である。

安定した生活と安全と思える自宅にぽっかり空いた落とし穴。
息子と自分の世界に閉じこもり、他人に無関心だった主人公が、これまで関わることのなかった貧困層と関わることで、己の無関心と、相互理解の断絶が浮き彫りになってくる。

現代においても、己の無関心が気がつかない内にテロ組織のような存在を生んでいるのかもしれないし、気づかない間に愛する何かを追い詰めているのかもしれない。
問題ないと思っていた人生でも、次の瞬間奈落へと突き落とされることもあるかもしれない。
そんなことを考えはじめるとどんどん鬱になってくる。
鑑賞中は主人公の置かれた状況の息苦しさに、早く映画が終わって欲しいと感じてしまった。

しばらく不愉快な顔として残りそうな、悪ガキのリーダーを演じるのがジェームズ・カーンとは! こんな若い彼をはじめてみた。
エレベーターに閉じ込められる婦人を演じるのが『風と共に去りぬ』でメラニーを演じたオリヴィア・デ・ハヴィランド。やけに胸元にエロスを感じさせる演出が多かったような。

とにかく一人暮らしでエレベーターには乗りたくないと思わせる映画である。